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京都最大の旧遊郭のあった五条楽園
京都の下京区・東山区にまたがる場所にある「五条楽園」は、かつては大人の遊び場として知られた土地です。最盛期はお茶屋や置屋130軒は営業する京都でも最大の遊郭地帯でしたが、現在はその独特の建築や他では見られない歴史的な施設が注目され、観光スポットとなっています。
歴史も古く、寺社仏閣や歴史的な建物が残る京都には数々の観光スポットがありますが、その中でもよりディープな印象であり、日本独自のある種伝統的な雰囲気の街、という点からエキゾチックな要素を求める外国人観光客からの人気を集めています。
五条楽園へのアクセス
五条楽園は京都市内を流れる鴨川の近くにあり、鉄道で行く際の最寄り駅は京阪本線の清水五条駅です。また京都への観光の場合、交通網はバスが比較的発達しているので「河原町五条」というバス停に停まるバスに乗れば、京都駅から15分ほどで着きます。
また、これは体力や時間に余裕がある人向けですが、京都駅からのアクセスなら歩いて行くことも可能です。五条楽園のあたりまでなら20分程度で着く距離なので、観光客が多く混み合いやすい公共交通機関の利用よりも、ゆっくり歩いてみたいという人にはその方法もおすすめです。
反対に、駐車場が見つかりにくい、一方通行の道が多く土地勘が無いと通行が難しいなどの理由から自家用車での移動はおすすめしません。それぞれ自分に合った方法で五条楽園へ行ってみましょう。
五条楽園ってどんな場所?
元々遊郭のあった土地ということは分かりましたが、五条楽園はいつ頃に栄えた場所なのか、元遊郭としてどういった特徴があるのかなど、気になる点はたくさんあります。外国人観光客の興味を引いている五条楽園の歴史について、分かりやすくまとめました。
「七条新地」の名前で繁栄した遊郭地帯
五条楽園、または五條楽園と称される場所は、明治期まではいくつかの遊郭に分かれていました。近いエリアに複数あった遊郭が大正時代に合併し、「七条新地」という名前に統一されるようになったのが、「五条楽園」となる前の姿です。
遊郭と一言で言っても、芸妓さんに唄や舞踊といった芸を披露してもらって楽しむ「お茶屋遊び」と言われるものと、「性風俗」と言われるようなものとに分かれますが、当時の七条新地は両方を取り扱っているタイプの場所でした。
そのため、当時の七条新地は広い意味で「大人の遊び場」といったイメージの場所として、様々なお店が営業し、多くの人が日々遊びに訪れる場として栄えていました。
京都には芸妓さんが活躍する「花街」と呼ばれる場所がいくつかありますが、七条新地は性風俗を扱うお店が存在していたこともあり、「京都花街組合連合会」という会に入っている花街ほど敷居の高いイメージが少なく、庶民的な街として知られ、幅広い層に利用されていました。
現在もですが、花街はいわゆる「一見さんお断り」と言われる、初めて来た人がふらっと入ることの出来ないようになっているお店が多く、人の紹介が無いと入ることが出来ませんが、七条新地は「一見さんお断り」のお店がほぼ無い地域であったことも庶民向けであった理由です。
戦後、遊郭や性風俗関連の制度が変わった後も七条新地は時代に適応しながら栄えていましたが、1958年に売春防止法が施行されるようになってからは名前を「五条楽園」に改め、バーや旅館、お茶屋さんなど時代に合わせた営業方法がとられるようになりました。
2011年まで花街として営業
五条楽園と名前を変えた後は、芸妓さんの芸を楽しむ「お茶屋遊び」が出来る場、花街として営業を続けていました。一時期は所属する芸妓さんの数が100人程度はいたことからも、その隆盛ぶりは明らかです。
しかし、2010年にお茶屋・置屋の経営者が逮捕されたことをきっかけに、五条楽園に所属するお茶屋や置屋が一斉に休業してしまう事態となりました。現在もお茶屋・置屋は数軒残っているものの営業の見通しがたっていない状態で、廃業しているお店もあります。
長く続く花街として賑わいを見せていた五条楽園ですが、現在はほとんどがその名残となる建物を見て楽しむ場となっています。しかし、廃れていく建物だけではありません。
五条楽園の中で、歌や舞踊の練習・披露をする場として使われていた「五条会館」という施設があります。五条会館も老朽化に任せる状態でしたが建物が2018年にリノベーション業者に落札され、再利用される計画が起こりました。
お茶屋さんとして使っていた建物をリノベーションした飲食店などはありますが、五条楽園の中でも最大級の建物であった五条会館がリノベーションされ、また利用される日が来るということで、五条楽園は今後の展望も十分に期待されています。
五条楽園の見どころ
歴史のある元遊郭地である五条楽園ですが、今訪れるならどういったところに注目すれば楽しめるのでしょうか。外国人観光客から人気ではあるものの、日本人が行っても興味深いポイントが数多くあります。ここからは、五条楽園の見どころについて、その内容や背景も含めてご紹介します。
下町風情があふれる景観
五条楽園に行った際にまず注目して欲しいのは、下町情緒あふれる町並みです。上記でも述べたように、五条楽園は京都の花街の中でも「京都花街組合連合会」に加盟していない花街であったため、比較的親しみやすい雰囲気も特色のうちの1つです。
現在の五条楽園は一般住居のある中にお茶屋や置屋が点在していることもあり、全くの別世界というよりは下町といった表現がぴったりな場所となっています。初めて行った場所とは思えないような懐かしい雰囲気は、多くの日本人観光客の心にも残る見どころとなっています。
牛若丸・弁慶像のある五条大橋
様々な形でお話として残っている歴史上の人物に牛若丸と弁慶がありますが、その二人が初めて会った場所と言われるのが五条大橋です。道行く人を襲って刀を奪っていた弁慶と通りがかった牛若丸が戦い、弁慶が牛若丸に仕えるきっかけになった場所として、歴史ファンからも人気です。
五条楽園はその五条大橋周辺にあり、向かう方向によっては五条大橋を渡って五条楽園に向かうことにもなります。数々の物語に残っている五条大橋を一度見てみたいという人は、五条楽園に行く前に五条大橋に立ち寄っておくことをおすすめします。
ところどころで見られるカフェー建築
大正~昭和初期の頃に流行していた「カフェー」という営業形態の喫茶店があります。これは、現在で言うところのカフェとは違うもので、化粧や服装を派手にした女給のサービスを売りにするタイプのお店で、「特殊喫茶」とも呼ばれていました。
提供する料理や飲み物よりも女給のサービスという点に重きを置かれているため、カフェーは女給の給料が主にお客さんからのチップである、お客さんもお気に入りの女給を目当てに通うなど、現在で言う水商売のような位置づけでした。
谷崎潤一郎などの近代文学にも度々登場し、独自の文化を持つカフェーは、戦後の法改正でバーやクラブに形を変えましたが、カフェーのお店に用いられた建築様式は、現在も残っています。
特徴的な見た目が目を引くカフェー建築は、タイルを貼った外観や、凝ったデザインのガラス窓などが特徴です。内観だけでなく外から見ても可愛らしく、おしゃれな外観なので写真に撮りたいと訪れている人も多く、最近は特に人気の観光スポットとなっています。
カフェー建築の建物はほとんどが木造でありながら外観は洋風であるという造りのため、長期的に残すのは難しいのが問題点です。最近では老朽化しているところも多く、取り壊された建物もあります。そのため、現在残っているカフェー建築は貴重なスポットであると言えます。
五条楽園が外国人観光客に人気のわけは?
下町情緒の残る町並みにおしゃれな建築と、外国人・日本人問わず観光客からの人気を集めている五条楽園ですが、その中でも外国人にとってはどういった点が魅力的だと見られているのでしょうか。ここからは、五条楽園の魅力の中でも特に外国人から見た面をご紹介します。
市内最大の繁華街である四条から徒歩圏内
まず、観光客の目線から喜ばれているのは、繁華街である四条エリアからのアクセスの良さです。京都市内でも四条はファッションビルなど大きなお店が多く、人で賑わっている場所ですが、五条楽園はその四条から1駅程度、歩いて行くことの出来る距離にあります。
京都市内の移動は電車だと目的地に行きづらく、バス移動は混み合いやすいという問題点があります。その点、徒歩で行ける距離の場所なら繁華街での観光や買い物と合わせて訪れやすいので、観光客からも行き先に選ばれやすくなります。
観光スポットが多く、ある程度効率的に回ることが必要となる京都観光の中で、アクセスの良さというのは土地勘が薄い外国人にとっては無視出来ない人気の理由です。
昭和初期にかけて建築された独特な建物
現在、五条楽園に残る建物は大正~昭和初期に建てられたものが多く、当時の流行や遊郭建築ならではの特徴が表れた、非常に印象的な外見となっています。その中でも目を引くのが、「唐破風」と言われる曲線の混じった造りの屋根が使われた、木造建築です。
曲線のフォルムが中華風にも見える唐破風の屋根ですが、日本で古くから使われていた意匠で、お城やお寺などに使われていました。それが遊郭という場で使用されていることもあり、より独特な、他では見ることの出来ないフォルムの建物となっています。
五条楽園で見られる建物はその他にも、上記でご紹介したカフェー建築や、3階建ての木造建築など、日本人が見てもこんな建物が残されていたのかと驚くこともあります。
元々京都という場所が外国人からすれば「エキゾチックな魅力がある」と人気ですが、五条楽園の建物はその中でも庶民的でありながら他の場所には無いオリジナリティが強いため、外国人観光客の多くが「一度は行ってみたい」と噂する人気スポットとなっています。
民泊施設が多い
観光客、特に近年は外国人観光客が多く利用している民泊施設ですが、五条楽園の周辺は京都の中でも民泊施設の多いエリアです。民泊施設は料金が安い施設が多いこと、また気軽な雰囲気で泊まることの出来る宿が多いため、バックパッカーにも人気があります。
京都には建物がおしゃれな民泊も多く、町家をリノベーションしたタイプの民泊は外国人観光客から特に人気です。また、宿が近いところにあれば移動の時間を気にせず遊びやすいので、その点でも五条楽園は外国人から好まれていると言えます。
五条楽園の人気のスポット
ここまでは五条楽園の人気の理由や、外国人観光客に喜ばれているポイントについてご説明しました。そしてここからは実際に、五条楽園でどういった人気スポットがあるのかをご紹介していきます。
「お茶屋本家三友」
「お茶屋本家三友」は、五条楽園のあたりを流れる高瀬川沿いにあるお茶屋さんで、五条楽園エリア内でもその風格と立派な佇まいは見ものです。先程ご説明した唐破風の屋根など、豪華に見せる遊郭建築は独特の魅力があり、表に「三友樓」という文字が入っているのが見えます。
豪勢な雰囲気を出している遊郭建築の多い五条楽園の中でも「お茶屋本家三友」は最大のお茶屋であり、見るからに趣のある様子に写真を撮っている観光客も少なくありません。
2010年までは現役で使われていた建物ですが、現在は空き家状態のため外から見るだけの建物となっています。空き家となってはいてもインパクトある第一印象や高瀬川と重ねて見た風景は立派なものなので、観光に訪れる価値は十分にある、人気のスポットです。
住所 | 京都府京都市下京区岩滝町162 |
電話番号 | - |
「山内任天堂旧本社社屋」
「山内任天堂旧本社社屋」は、今はゲーム製作会社として世界的に有名な任天堂の旧社屋で、かつては花札を生産していた時代の姿を現在にも残しています。洋風でモダンな雰囲気の建物には「かるた・トランプ製造元山内任天堂」と書かれたプレートが掲げられています。
プレートに記されているように、任天堂では花札の他かるたやトランプも生産しており、1902年に日本で初めてトランプの生産を行ったのは任天堂です。現在のゲーム会社の前の姿を伺い知ることが出来るのが、五条の旧社屋だと言えます。
社屋が五条に置かれていたのは、花札という遊びに使われるもののため遊郭のあるエリアと相性が良かったからなど、様々な説があります。建物は公開されていないため、中に入ることは出来ませんがつい写真におさめたくなるような佇まいの建物です。
住所 | 京都府京都市下京区鍵屋町342 |
電話番号 | - |
「宿屋 平岩」
元々遊郭であったところを旅館として形を変え、営業しているのが「宿や 平岩」です。建物は遊郭建築そのままの状態を残しているため、日本人観光客にもですが、特に外国人観光客からの人気が高く、京都観光の際には泊まってみたいと希望する観光客も多くいます。
当時の形をほぼ残しているため客室は全室和室、かつ風呂・トイレが共用の造りで、昔ながらの雰囲気が感じられます。また宿泊料金も1泊4000円~とリーズナブルなので、バックパッカーなど旅費を抑えて旅がしたい人から喜ばれています。
宿の公式サイトにはギャラリーページがあり、格子の窓や館内の様子の写真が一部掲載されています。どれも趣があり、実際に中に入ってみたらどうなるのだろうと興味がわく内容です。
五条楽園では外観しか見ることの出来ない建物も多い中、中をじっくり見られる場所はなかなかありません。旅行ではその土地の特色が味わえる宿に泊まりたいという人には、「宿屋 平岩」がおすすめです。
住所 | 京都府京都市下京区早尾町314番地 |
電話番号 | 075-351-6748 |
「源融の木」
「源融の木」というのは、平安時代の貴族、源融(みなもとのとおる)の住んでいた跡地にある木のことで、木と一緒に石碑が建てられています。源融は源氏物語の光源氏のモデルになったとも言われている人物で、当時から有名な存在でした。
源融が住んでいた邸宅「河原院」は五条楽園近くの京都の地名、河原町の語源になったと言われています。源融の木も、邸宅の中にあった森の名残であり、森があるほどの邸宅の広さが想像出来ます。かつて広大な邸宅があった場所は、歴史が好きなら訪れてみたくなるスポットです。
住所 | 京都府京都市下京区都市町 |
電話番号 | - |
五条楽園のグルメスポット
歴史のある町並みやお茶屋さんの建物見物を堪能した後は、美味しいご飯を食べられるグルメスポットも知っていると旅がより楽しめます。五条楽園のあるエリアには、外国人から人気を集める和風料理や、反対に国際色豊かな料理を出すお店など、ごはん処も充実しています。
ここからは、五条楽園へ観光に行くなら合わせて行っておきたい、グルメスポットを3軒ご紹介します。
「晩boo 清水五条」
「晩boo 清水五条」は、清水五条駅から清水寺へ向かう道中にある、居酒屋としても使える和風料理のお店です。ランチから営業しているため、散策途中のランチでも、夜にお酒とご飯を楽しむためでも使いやすいのが嬉しいポイントです。
晩booでは、野菜の多い京料理系から海鮮料理まで、和風の中でも様々なタイプの料理を食べることが出来ますが、中でも人気があるのが近江地鶏を使用した親子丼です。卵と鶏肉両方の材料にこだわった親子丼は、食べごたえがあると評判になっています。
コースメニューもあるので、複数人で京都らしい旬の食材を味わうのもおすすめです。京都では定番の「おばんざい」もあるので、ご当地感があるグルメを楽しみたい人はぜひ行ってみてください。
住所 | 京都府京都市東山区東橋詰町13 アーバイン京都清水五条 1F |
電話番号 | 075-551-2088 |
「五条パラディソ」
イスラエル料理という、京都の中でも珍しい料理が食べられるお店が「五条パラディソ」です。店内はおしゃれかつアットホームで、外国人観光客が行っても寛げる雰囲気があります。提供される料理はイスラエル料理なので名前に聞き覚えが無いものも多いですが、どれも味は絶品です。
ランチでは定番料理を組み合わせたイスラエルプレートも注文出来るため、慣れない人にも優しいメニューとなっています。また、和牛ステーキもメニューにあり、ジューシーなお肉も楽しめます。
ディナーは23時まで営業しているため、他でご飯を食べた後の二次会利用にも使いやすいのが魅力です。京都で異国情緒を感じながら、美味しいご飯を楽しみましょう。
住所 | 京都府京都市下京区聖真子町169-1 |
電話番号 | 075-585-4188 |
「半兵衛麩 本店」
京都のグルメと言えば、おばんざいや懐石などがありますが、「お麩」も根強い人気があります。生麩を使用したメニューは京都以外の場所では食べられるお店もあまり多くないため、京都へ旅行に行くなら「お麩」を使ったグルメは押さえておきたいポイントです。
「半兵衛麩 本店」は五条大橋のすぐそばにあるお店で、120年前から残る京町家をリノベーションした店舗で運営されています。お店は茶房や購入店舗、向かいの喫茶店などが集まっており食べて美味しかった「お麩」を店舗ですぐ購入出来るところも観光客から喜ばれています。
本店奥にある茶房ではお麩と湯葉を使った料理を事前予約で食べることが出来、軽いランチとしてその味や食感を楽しめます。また、本店向かいにある喫茶店では「なま麸のおしるこ」など生麩を使った和スイーツがいつでも楽しめるので、散策途中の休憩にもおすすめです。
かつては料亭などで使われ、一般家庭には普及していなかった生麩を美味しく手軽に食べられるように工夫した半兵衛麩は、日本人からも外国人からも人気のお店です。京都でしか食べられないものを食べてみたい人は一度行ってみてください。
住所 | 京都府京都市東山区問屋町通五条下る上人町433 |
電話番号 | 075-525-0008 |
五条楽園でディープな京都を楽しもう
庶民的な雰囲気もありながら、お茶屋独特の建物が残る五条楽園は京都の中でもなかなか見ることの出来ないものが多いディープな観光スポットとして、日々外国人観光客が訪れています。
かつてはお茶屋遊びに使われていた建物が時代を越えて残っている様子は、建物の老朽化が進んでいる現在、貴重な存在です。記事でご紹介した人気スポットを中心に、五条楽園でどこか懐かしくも感じられる町並みやお店を満喫してください。