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北海道の旭岳とは?
北海道を代表する山である旭岳は、道内のほぼ中心に位置する大雪山(だいせつざん、または、たいせつさん)連山の主峰として北海道一の高さを誇る山です。その高さは標高2291メートルにもなり、北海道の厳しい環境と大自然が生み出す絶景から、日本の百名山に選ばれています。
大雪山は北海道岳や黒岳といった大雪山連峰と、十勝岳や美瑛岳などを含む十勝岳連峰の20を超える山から構成され、それら一帯を大雪山と呼びます。2000メートル級の峰々が連なる連峰一帯は「大雪山国立公園」に指定され、美しい原風景が守られています。
大雪山は、実は火山活動によって生まれた山です。そのため、火山特有の岩肌や土壌、また「カルデラ」がよくみられます。カルデラとは、火山活動により山の中心や一部がへこんでできた火山特有の地形です。カルデラはスペイン語の「鍋」や「蓋」を由来としています。
旭岳をはじめとした大雪山一帯には、カルデラに水が貯まってできたカルデラ湖がいくつもあり、山脈と湖の美しさから観光客や登山客に人気を博しています。また山中では、地熱によって暖められた水蒸気が噴き出している光景なども見られます。
大雪山の火山活動はここ3000年間大きな噴火はなく、2020年1月時点では安全に登山ができる環境にあります。
古くから北海道の最高峰である旭岳は、大自然が織りなす雄大な景観から、アイヌ語で「カムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)」と呼ばれています。
春夏の芽吹きの景色、秋めく紅葉が美しい一面の紅、冬の凍てつく雪化粧など、旭岳の持つ四季折々の素晴らしい表情を見ることができます。また、経度の高さから、本州では3000メートル級の山にしか植生しない植物を眺めることも可能です。
高原帯の高山植物が魅力的
旭岳の高山帯には美しい高山植物が豊富に生育しており、登山客や植物好きの間では人気を集めています。高山植物とは、高所に強い針葉樹林ですら生育できない森林限界点以上の高山帯に生育する草本植物のことを指します。
高山植物に分類されるものは、旭岳では250種類以上が確認されています。大雪山や北海道の山々では、シベリアやサハリン、カムチャツカなどの北方を起源とする品種と本州由来の品種が交じって生育しているため、珍種を含む豊富な種類の高山植物が見られます。
中でも北海道の最高峰である旭岳では、豊富な種類の高山植物が広大な高山部でモザイク状に広がる美しい景色を作り上げています。旭岳では、雪の積もらない5月下旬から9月頃まで季節ごとの高山植物を観られます。特に多くの高山植物が花を咲かせる6月から7月下旬にかけてが見頃です。
美しく希少な高山植物たちには、厳しい環境の中生き抜く力強さに不思議な魅力があります。小ぶりで白い花弁がかわいいチングルマや、ピンク色の壺のような形の花を咲かせるツガザクラ、低い位置に赤い実を作るコケモモなど綺麗な色合いの植物が群生しており、神秘的な箱庭のようです。
旭岳の登山シーズンについて
大雪山旭岳への登山シーズンは、積雪の少ない6月下旬から初冠雪前の9月下旬ごろまでの時期がおすすめです。景色や気候的にも登山しやすい時期となり、初心者や日帰りでの登山客で賑わいます。
冬場の厳寒期でも旭岳への入山はできますが、夏場の登山とは比べ物にならない険しい登山となります。数メートルにもなる積雪や、ブリザードで視界が真っ白になるホワイトアウトなどの厳しい環境に加え、天候が不安定な中での登頂には、熟練者でも十分な装備を持って臨む必要があります。
旭岳では7~8月でも最高気温が10度前後、最低気温が4度程の気温帯です。しっかりとした防寒装備だけでなく、汗冷えを想定した対策をしましょう。特に春先や秋口は本州の冬山を想定した装備、服装で臨みましょう。
9月下旬から始まる紅葉は魅力的
旭岳では、春から夏にかけて高山植物の萌える緑と、随所で観られるカルデラ湖の空を移す青さがとても映える、素晴らしい光景に出会えます。また高山植物たちの開花時期とも重なり、美しいコントラストを生み出します。
秋には旭岳の木々が一斉に黄や紅へ染まり、燃えるような紅葉の中を登山することができます。経度と標高の高い旭岳の紅葉は日本一早く始まるといわれているため、見頃を逃さないようにしましょう。大雪山一帯での紅葉は、9月中旬から10月中旬にかけてが見頃です。
大雪山ではナナカマドや、モミジ、カバノキ、ブドウなどが紅葉し黄から橙、紅へと移り変わっていきます。特に9月下旬頃が、色の移り変わるきれいなコントラストが観られるためおすすめです。
旭岳の登山ルートについて紹介
大雪山一帯には多くの峰が密集しており、旭岳への登山ルートも様々あります。登山上級者はもちろん、初心者の方でも楽しめる旭岳登山ルートを詳しくご紹介します。それぞれの注意点や見どころ、所要時間についてチェックしましょう。
初心者はロープウェイを利用したコースがおすすめ
初心者の場合、ロープウェイを使った旭岳5合目からの登山ルートがおすすめです。麓の登山口からでは山頂まで10時間以上かかりますが、5合目からの登山では3時間程度で登頂できます。旭岳ロープウェイは麓にある標高1100メートルの山麓駅から、標高1600メートルの姿見駅まで約10分です。
料金は片道で、6月初旬~10月下旬の間は大人(中学生以上)2000円・小人1000円、それ以外の期間が大人(中学生以上)1300円・小人900円です。
姿見駅周辺では姿見の池などのカルデラ湖や展望台などの名所がある散策コースが広がっています。余裕のある方は装備をしっかりと行い、旭岳山頂へ向かう道中に少し遠回りして景観を眺めるのもおすすめです。
姿見駅→姿見の池→金庫岩→大雪山旭岳山頂
初心者の方にロープウェイを利用したルートを紹介します。「姿見駅」から東へ20分ほど歩くと「姿見の池」が見えます。姿見の池は、視界の開けた高野と池が旭岳の雄大さを一層際立たせ、登山客の定番の写真スポットになっています。姿見の池を過ぎた辺りから本格的な山道になっていきます。
山頂までは150分ほどかけて山道を登ります。9合目を過ぎた山頂付近で「金庫岩」と呼ばれる大きな四角形の岩が見られます。この岩は登山者の間では道しるべになっていますが、似たような形の岩が付近にいくつか見られるため、初心者の方は特に道を間違えやすいです。
過去には霧の濃い時期が重なり、金庫岩と偽物の岩を見間違えて遭難してしまったという事例があるので気をつけましょう。
無事に金庫岩前を進むと急勾配な坂道ですが、ここを抜けると山頂に到達します。頂上はなだらかで広めであり、三角点や北海道の最高峰を示す標識が立てられています。
標高2291メートル、頂上から360度すべての景色が見られる旭岳では、空の上から眺めるような感覚に囚われます。どこまでも広がる北海道の大地を一望できる素晴らしい絶景です。
行程時間は3時間程度
姿見駅から旭岳山頂まで、登頂時間の目安はおよそ3時間、歩行距離にすると約5.1キロメートルです。姿見駅から姿見の池まではおよそ20分、比較的なだらかな散策ルートを進みます。姿見の池から山頂までの目安は2時間半ほどです。
山道では高度が上がるにつれ、ガレ場と呼ばれる不安定な岩場地帯が増えます。岩場では足回りの怪我に気をつけましょう。クッション性の高い、履き慣れた登山靴を装備するのがおすすめです。
旭岳は周囲が開けているため、直線的に感じる道のりですが、実際には曲がりくねっているため、見かけよりも体力を消耗する場面が多いです。山頂から下山する際には時間が少し短縮され、2時間強ほどで姿見駅まで下りられますが、個人差はあるため、無理をしないようにしましょう。
上級者は登山口から登るコースもあり
登山の上級者になるとロープウェイの山麓駅脇から入る登山口から挑戦することもできます。旭岳の麓から標高差1100メートルをじっくり登っていきます。5合目までの道のりは所々木々が見られ、頭上近くまで伸びたクマザサが生い茂ります。
合計10時間以上かかる覚悟が必要
麓から旭岳山頂を目指すコースでは往復で10時間を超える道筋となります。麓の登山口から5合目の姿見駅まで、およそ2時間半~3時間です。そこから山頂までが3時間ほどかかるため、登りの合計時間は5~6時間と見積もられます。丸1日かかる道筋なので、それ相応の装備をしましょう。
旭岳から黒岳までの登山コースもあり
登山熟練者には旭岳と隣接する標高1984メートルの黒岳を縦走できるルートがおすすめです。旭岳山頂に到達した後、黒岳山頂を登り入山した旭岳登山口ではなく、黒岳北東から下山するルートです。
旭岳→間宮岳分岐→黒岳石室→黒岳→七合目登山事務所
旭岳登頂後、登ってきた登山道ではなく東に下る道を進みます。ガレ道を歩くうちに「間宮岳分岐」と呼ばれる分岐点が見えるので、そこから北の方角へ進みます。山の峰を縫うように歩き進むと、黒岳目前で「黒岳石室」という山小屋にたどり着きます。
黒岳石室では宿泊も可能で、簡単な食料や飲料なども販売しています。近くには花畑があり、ベンチで一息つける休憩スポットです。山小屋から黒岳へは30分ほどでたどり着けます。黒岳からはこれまで歩いてきた峰々が見られます。
黒岳から北東へ下山すると7合目地点からリフトが稼働しています。このリフトとロープウェイを利用して、黒岳の麓の層雲峡まで下山できます。層雲峡は温泉も有名なので、是非立ち寄ることをおすすめします。
旭岳から黒岳を目指す縦走ルートは、稜線に沿って大雪山のいくつもの峰々を渡り歩く気持ちのいいコースです。一面に広がる大地と一切の人工物のない空間は、日々の生活では出会えない幻想的な世界です。
行程時間は7時間程度
旭岳から黒岳を縦走する登山コースでの所要時間の目安は7時間ほどです。姿見駅から旭岳山頂までが約3時間、旭岳山頂から間宮岳分岐、黒岳石室を経由して黒岳までが約3時間半、黒岳を下山して7合目にある事務所までは約30分です。ただ、周囲の状況や体調などによる違いがあります。
このコースでは入山する麓と下山する麓が異なるため、麓まで車でアクセスする場合は注意が必要です。旭岳登山口と黒岳のロープウェイ乗り場は山を挟んでおり、車でアクセスする場合は山を迂回して向かう必要があるので2時間近くかかります。
それぞれのルートも時間が必要
旭岳登山は様々なルートがあり、初心者から熟練者まで幅広く楽しめる山ですが、ロープウェイを利用する最短ルートでも登山の所要時間は往復5時間ほどかかります。経験者の方であっても注意を怠らず、しっかりとした装備で登山するよう心がけましょう。
旭岳はスキー・スノボーの聖地
山肌を覆う雪が厚みを増す冬の旭岳は、登山客でにぎわう夏から一変して腕に覚えのあるスキーヤー、スノーボーダーが世界中からやってきます。姿見駅から山の麓までスキーコースが整備され、夏場は登山客向けに稼働していたロープウェイがリフト代わりに転用されます。
スキーコース区画外で滑る観光客・スキー客がいますが、かなり難易度の高い場所で、雪崩に巻き込まれる可能性もあるため、必ずしもおすすめはできません。
スキー・スノーボード上級者でも山の地形を把握しないとうまく滑ることが難しく、北海道の山岳地帯特有の、雪質の良いパウダースノーも相まって、スキーヤー、スノーボーダーの間では冬の旭岳は聖地とされています。
パウダースノーを滑る魅力
パウダースノーは手で握っても固まることがない、乾いた粉上の雪です。スキーヤーの間では滑った時の滑らかさや板の加速度合いが良く、滑り心地がとても良いと評判です。パウダースノーは、湿度、気温が共に低い環境で生まれます。
北海道には、世界でも最高の雪質を誇るパウダースノーの積もるスキー場がいくつもあります。シベリアから吹く、水分の多い北風が北海道の西岸部で雪を落として乾燥した北風に変わり、内陸部の大雪山などの山々にぶつかることで極度に空気が冷やされ、パウダースノーになるためです。
雪崩発生の危険もあるため自己責任
旭岳のスキー場では雪崩が起こることもしばしばあります。そのほとんどが規定コース外における出来事であり、スキー場側でも規定区域外での行動に対する注意喚起を行っています。規定の枠外で滑る場合には、自己責任による行為であるという意識を持ち、安全に十分配慮しましょう。
旭岳のおすすめ装備
登山の所要時間が比較的長く、ガレ場などの足場が悪いポイントがあり、標高の高い北海道の山であることを意識して装備を整えましょう。食品の備蓄や履きなれたソールの厚い靴、防寒用アイテムが重要です。
防寒対策の装備は必須
旭岳は夏場でも気温が4~10℃ほどしかないため、防寒対策をしっかりしましょう。重ね着することで防寒対策だけではなく、暑さを感じたときに着ている服の枚数で温度調整ができます。また体温と外気の温度差が大きいため、汗冷えに注意して着替えをしっかり用意しましょう。
自分に合った登山靴を選ぼう
旭岳山頂までのアクセスは、初心者でも5時間以上の道のりを歩く必要があります。長時間の歩行が可能な登山靴や、靴擦れ等を起こしにくく履き慣れた登山靴を選びましょう。標高が高くなるにつれ足場も悪くなるため、クッション性の高いソールであるとより安心です。
水分だけでなく携帯食もおすすめ
長時間の歩行に加え、低温環境下で登頂を目指すため、飲み水はもちろんのこと、カロリーの高い携帯食料を多めに装備して持参するのがおすすめです。体調不良を起こした場合や霧などの悪天候による遭難といった不測の事態に役立ちます。
旭岳の基本情報
初心者から熟練者までが楽しめる多彩な登山コースをもつ旭岳へのアクセス情報について、ここでご紹介します。車でアクセスする場合と、バスによるアクセス方法があります。
車でのアクセス
旭岳の麓付近まで、車でのアクセス方法を紹介します。北海道内からアクセスする場合、まず旭川市内を目指しましょう。旭川市内からは約45キロ、1時間ほどで旭岳の麓までアクセスできます。
市街地からは、旭川旭岳温泉線をまっすぐ北東へ進んでいきます。忠別湖(ちゅうべつこ)に流れる忠別川に沿って進むと二股の道に出るので、旭岳方面へ向かう「道道1116号線」へ進みます。そのまま山道を20分ほど登るとロープウェイ乗り場がある麓までたどり着きます。
ロープウェイ乗り場付近には無料の公営駐車場と1日500円の山麓駅横駐車場があります。北海道外からアクセスする場合は、飛行機で最寄りの「旭川空港」まで向かい、レンタカーもしくはバスを利用して旭岳までアクセスできます。
バスでのアクセス
北海道の道路は市街地を抜けると道幅が広く、信号が少なく距離の長い一本道がほとんどです。そのためスピードを出す車が多く、北海道での運転に慣れていない場合には事故を起こしやすくなるため、バスを利用したアクセスもおすすめです。
旭岳へは旭川駅や旭川空港といった主要な交通機関からシャトルバスが出ています。シャトルバス「いで湯号」は、旭川市内から旭川駅、旭川空港、東川町中心部、旭岳温泉間を1日に4回往復しています。片道料金は旭川駅から旭岳まで1430円、旭川空港から旭岳まで1000円です。
北海道の場合、冬場には路面に積もった雪が氷となってできるアイスバーンで滑りやすくなります。また、タイヤの跡で雪道にできる轍などによる路面のでこぼこ、路側帯が雪で覆われて見えなくなるといった状況も起こります。
運転初心者の方や雪道運転に慣れていない場合は運転で体力を消耗させるよりも、バスや電車といった公共機関を利用して旭岳までアクセスして、登山に向けて体力を温存しましょう。
旭岳の登山に挑戦してみよう!
旭岳は、初心者から熟練者まで楽しめる多彩のコースと、シーズンごとに様々な情景へと移り変わる美しい山です。北海道の最高峰、旭岳には沢山の魅力が詰まっています。大雪山・旭岳の登山に是非チャレンジしてみましょう。