シュールストレミングは世界で一番匂いが強い食べ物！美味しい食べ方は？

世界一匂いの強い食べ物として有名なものが、今回ご紹介していく「シュールストレミング」という名前の缶詰です。食べ物を保存するための先人の知恵が詰まった缶詰なのですが、その強い匂いのせいもあり人気とは言いづらい食べ物です。

強い匂いはありますが、長く伝わってきただけあり、実は結構美味しい食べ物だということは知っている人は少ないのではないでしょうか。本記事では、シュールストレミングが何なのか、から始まり、匂いの秘密、缶詰の安全な開け方、そして美味しい食べ方までを説明させていただきます。

シュールストレミングとは、新鮮な魚を長く保存しておくために作られた保存食の一種です。日本でいうところの、干物やくさやと同じ様なものと考えていただければわかりやすいでしょう。

しかし、シュールストレミング生誕の地、スウェーデンでは、当時のヨーロッパで最も盛んに作られていた保存食、塩漬けが非常に作りづらい環境でした。

日照時間が少なく、塩づくりに必要となる薪の確保が難しかったスウェーデンでは、塩はとても貴重でした。そのため、固形の塩をたっぷり使わなければいけない塩漬けはスウェーデンの人々にとって、とても作るハードルの高い物だったのです。

しかし、スウェーデンの人々は塩が無いなりに工夫を凝らし、知恵を絞り、極限まで塩の量を減らした保存食を完成させました。出来上がった保存食が、シュールストレミングというわけです。

スウェーデンが編み出した、極限まで塩を減らした保存方法は、食べ物が腐らないようにすることは出来ましたが、固形の塩をたっぷり使って行われる従来の塩漬け保存のように腐敗も発酵もしない状況は作れませんでした。

しかし、発酵することを許せば塩漬けと同等の長期保存が出来るという事を確立した当時のスウェーデンの人々は逆に「発酵することで美味しくなる」ような設計の保存食を創り上げます。

極限まで発酵させることの代償として、シュールストレミング特有の強い匂いが出てしまいますが、当時の環境や資源量などを考えると、とても理にかなった食べ物と言えます。優れた保存性の高さから、17世紀当時の軍のメインの食糧となる優れた実績もあります。

シュールストレミングの名前を翻訳してみると、シュールの部分はスウェーデン語の「スール (sur)（すっぱい）」を意味しています。そして、後半のストレミングは「ストレンミング (strömming)（バルト海のニシン）」を意味します。

2つの単語を合わせると、「すっぱいバルト海のニシン」となります。まさに、塩漬けにしたのち、醗酵してすっぱくなった食べ物であるシュールストレミングそのものを表しているネーミングと言えます。

シュールストレミングを食べる第一段階、缶詰を開封するところから注意点が満載です。シュールストレミングは缶の中でも醗酵が進むため、缶の内部に醗酵の際に発生したガスが溜まります。そのためシュールストレミングの缶詰はガスで膨らんでいる物がほとんどです。

当然何の対策も無しに開封すると、開封とともに缶の中に溜まっていたガスが噴き出し、シュールストレミングの強い匂いがする汁があたりにまき散らされてしまいます。

ですので、シュールストレミングの開封は多少汁がまき散らされても影響の少ない屋外で行うことが推奨されています。

他にも、ガスの噴射を抑えるため、水中に沈めながら開けるといった手段や、缶を傾け、片方にガス溜まりを作り、溜まった部分に缶切りを突き立てるという方法もあります。

シュールストレミングの強い匂いは何かについてしまうと、とにかく落とすのが難しいので開ける際はあらかじめ匂いが飛び散らない対策をしっかりすることが大切です。

また、シュールストレミングが届いてからすぐに開封するのでなければ、保存の仕方もとても大切です。必ず届いたらすぐに冷蔵庫などの気温の低い場所で保管しましょう。常温で放置は絶対に避けましょう。

何故なら、スウェーデンのある北欧の地は、日本に比べるとかなり気温が低い地域です。スウェーデンのような寒い地域であれば緩やかに進む発酵も、日本の暖かな気候の下では急激に発酵が進みます。

醗酵が進めば匂いがさらに強まってしまう他、ガスの発生により缶詰が破裂してしまうリスクが跳ね上がります。

世界で最も匂いが強い食べ物と言われているシュールストレミングですが、いったいどれほどの匂いがするのでしょうか。日本を代表する匂いが強い食品を、匂いを数値化した単位、Au（アラバスター単位）で数値化して比べてみます。

日本の匂いの強い食べ物代表格と言ったら、「くさや」や「納豆」でしょう。しかし、実はくさやも納豆もシュールストレミングの匂いと比べると足元にも及ばない程度の数値なのです。

先ず、納豆の数値ですが、納豆は452Auとなっております。そしてくさやはというと1267Auです。くさやもかなりの数値のように思えますが、シュールストレミングはさらに上を行く、なんとくさやの6倍ほどの数値となっているのです。

具体的な数値はと言うと、シュールストレミングはなんと8070Auという数値となっています。日本の匂いの強い食べ物たちと比べると格段に高い数値と言えるでしょう。

ちなみに、世界で2番目に匂いの強い食べ物は6230Auのホンオフェという食べ物です。韓国の料理で、ガンギエイという名前のエイの切身を発酵させた料理です。

かなり強いアンモニア臭が特徴の料理で、シュールストレミングとはまた少し違った強い香りが特徴です。

世界1番目と世界2番目の数値が2000程も離れているという点も、シュールストレミングがどれほど匂いの強い食べ物なのかを感じることが出来ます。

また、シュールストレミングの匂いの強烈さを物語る事件が、2014年のノルウェーで起きていきます。なんと、ノルウェーのとある小屋から放置されたシュールストレミングの缶詰が見つかったのです。

ぱんぱんにガスで膨れ上がったシュールストレミングの缶詰はなんと25年間も放置されており、いつ爆発しても全くおかしくない状況だったといいます。

とても危険な状態のシュールストレミングの缶詰を処理するために、現場には爆発物処理班と缶詰の専門家が呼ばれ、とんでもない騒ぎとなったそうです。缶詰にも関わらず、爆弾と同じ様な扱いです。

無事処理されたシュールストレミングの缶詰の中身は、完全に発酵が進み切っており既にニシンの身は跡形もなく溶け、液状化していたそうです。匂いは当然とんでもないレベルに達しており、当然食用出来るものではなかったそうです。

もしそのまま気付かれずに爆発していたら、辺りに匂いがばら撒かれ、シュールストレミング爆発事件として世界に名を遺す大事件になっていたかもしれません。

紹介させていただいた、世界第2位の匂いの強い食べ物、ホンオフェは醗酵により発生するアンモニアが強い匂いの原因となっています。

では、世界1位のシュールストレミングは一体何が原因であの強い匂いを生み出しているのでしょうか。

シュールストレミングの匂いの正体は、ハロアナエロビウムという名前の細菌です。ハロアナエロビウムは、缶の中という非常に酸素が少ない状況で醗酵を進ませることのできる嫌気性細菌と呼ばれるものです。

ハロアナエロビウムが醗酵を進めていく際に一緒に発生するものが、数々の悪臭物質です。シュールストレミングは1つの悪臭物質にとどまらず、4種類もの悪臭物質を発しています。

シュールストレミングが発する4つの悪臭物質の1つめは、強い刺激臭を出すプロビオン酸、2つ目は腐った卵のような匂いとよく形容される硫化水素です。

さらに3つ目は、乳製品が腐った時に発される匂いの成分と言われている酪酸で、4つ目は酢のような酸っぱい匂いのする酢酸となっています。

選り取り見取りの悪臭物質を持つ世界一臭い食べ物、シュールストレミングは、他にも、腐った魚や、炎天下の下に数日間放置した生ごみのような匂いとも形容されており、かなりキツイ匂いであるということが容易に想像できます。

シュールストレミングの開け方や、開けた瞬間に襲い来る匂いがどのようなものか、そして匂いの正体はどのようなものなのかが分かったところで、お次はいよいよシュールストレミングの味をご紹介していきます。

話題性や知名度はとにかく高いので、中には食べてみたい、匂いを実際に体験してみたいとお思いになっている方がいらっしゃるかと思いますが、冷静にもう1度じっくり考えてみることをおすすめします。

感想に個人差が多少はあるという前提で読み進めて行ってください。まず、シュールストレミングを口に入れたときの第一印象はとにかく塩辛いにつきます。

前述した通り、スウェーデンは塩が貴重だった環境下のため、塩の使用量が極限に削られているとはいえ塩漬けの魚の缶詰です。強烈な塩辛さと、同時に醗酵によって強化された強烈な生臭さが襲い掛かってきます。

さらに、当然ご紹介させていただいた4種類の悪臭物質も健在ですので、端的に言うと、腐った食べ物を食べているような危機感を覚えます。体が自然と拒否してしまうような匂いと味です。

腐った魚を食べたことがある方の方が極めて少数でしょう。しかし、シュールストレミングが発する悪臭物質は腐敗物が発する匂いと多くを共通しています。そのため、魚が腐ったような味と感じ、形容する人が多くいます。

シュールストレミングについて知識をつけていけばいくほど、美味しいとは程遠いしスウェーデンの人は味覚がおかしいのではないか？と少し疑ってしまいがちですが、当然スウェーデンの方でもシュールストレミングが嫌いな人もいます。

あくまでシュールストレミングは保存食であり、保存技術が発達した現代においてはシュールストレミングを食べなければいけないという環境も減りつつあります。そのため、食べない方、食べれない方も多く存在します。

しかし反対に一定数の猛者が存在することも事実です。シュールストレミングを作る際、ニシンは頭と内蔵を取り除いた状態で作るのが一般的です。ですが、中には頭と内蔵を残したまま作るシュールストレミングが好きという方もいます。

頭と内蔵は、どの食べ物でもですが最も腐りやすい部分とされています。シュールストレミングにする際、腐敗はしませんが頭と内臓の部分は醗酵が進みやすい部位となります。

腸内細菌の影響等もあり、まるごとニシンのシュールストレミングは普通のシュールストレミングよりも匂いが強烈になると言われています。真の世界一は丸ごとニシンのシュールストレミングということでしょう。

主にスウェーデンの北部にお住まいの方はシュールストレミングを今でも日常的に食べる文化が根強く残っており、ニシンが良く取れる時期になると必ず食べるというご家庭もあるようです。

一部の猛者もいるにはいますが、ご家庭でよくシュールストレミングを食べるという方々はどのような手段を使ってシュールストレミングを美味しく食べているのでしょうか。次項では食べ方の秘密に迫ります。

言われている情報だけで判断するならば、到底美味しく食べるなんて無理だろうとお考えの方がほとんどでしょう。しかし、シュールストレミングには17世紀ごろの軍の食料だった実績があります。

また、現在も先述したようにスウェーデン北部ではよく食されており、現地の人達にとってはわりとポピュラーな食べ物となっております。

発明当時からずっとシュールストレミングを食べ続けてきたスウェーデンの人々は、匂いの強すぎるシュールストレミングを少しでも美味しく食べるための食べ方を模索しました。結果、匂いの気にならない美味しい食べ方を多数編み出していました。

いくらシュールストレミングが実は美味しいと言われても、口に入れた瞬間えづいてしまう強烈な匂いが邪魔をして、とても食べれたものではないでしょう。

スウェーデンの方々は、最大のネックである強烈な匂いを牛乳やウォッカ、または北欧で広く飲まれている蒸留酒、アクアビットでシュールストレミングを洗うことにより、匂いを軽減させることに成功していました。

洗うことにより、匂いをおよそ3～4割ほども軽減させることが出来るので、シュールストレミングをかなり食べやすいものにしてくれます。

しかし、匂いを軽減させてくれる手段があるとはいえ、開封はもちろん、洗う作業も必ず屋外で済ませるようにしましょう。シュールストレミングの匂いは家具や衣類にうつってしまうと、しばらくは絶対に取れません。

シュールストレミングは匂いの対策さえ出来てしまえば、食べやすさは格段に上がります。人によってはちょっと辛みがキツめの塩辛のような感覚で食べることが出来ます。

では、塩気が強いシュールストレミングの美味しい食べ方を、現地の人が楽しんでいる食べ方と共に紹介していきます。

とにかく塩辛いシュールストレミングの美味しい食べ方は、塩辛さを中和してくれるような食べ物と合わせて食べるのがおすすめです。

相性の良い代表的な食材の1つ目は、じゃがいもです。ふかしたアツアツのじゃがいもに、細かく刻んだシュールストレミングを少しのせて食べると、塩辛さがじゃがいもの良い味付けとなってくれるので、シンプルだけれど美味しい食べ方と言えます。

ふかしたじゃがいもそのままでも良いですが、潰してマッシュポテトにしたじゃがいもでも相性抜群です。アンチョビを混ぜて作るポテトサラダがありますが、同じ様な風味のお酒によく合うポテトサラダになります。

トゥンブロードと呼ばれる薄いパンにのせてブルスケッタにする食べ方も、シュールストレミングの美味しい食べ方として広く知られています。

トマトや玉ねぎを薄切りにしたものや、じゃがいもなどと共にトゥンブロードの上にのせて食べると、程よい塩辛さがアクセントとなり非常に美味しいです。

シュールストレミングは牛乳との相性も良いので、シュールストレミングブルスケッタと牛乳の朝ご飯もスウェーデンでは長く広く愛されている朝食メニューの1つです。

そして、塩辛いものと言えばお酒のおつまみにぴったりという認識は世界共通認識となっています。ビールはもちろんのこと、シュールストレミングの匂いを落とすために使ったウォッカとの相性も抜群です。

かなりの塩辛さなので、ちびちびと食べながら飲むという楽しみ方が出来ます。とても食べれたものではないと言われがちなシュールストレミングですが、しっかり処理を行えば美味しいご飯やおつまみに早変わりします。

もしシュールストレミングを実際に体験したいという方がおりましたら、美味しい食べ方をしっかり把握しておくと無駄にせずにすむかもしれません。

また、意外なことにシュールストレミングは健康に良いという声も多くあります。特に目に良いとされ、本場スウェーデンでは、白内障や緑内障の防止に効果があると言われております。

まだ医学的にハッキリとした根拠が証明されたわけではありませんのでまだまだ信憑性にかける情報ではありますが、今後研究が進んでいくことで効果が証明される日が来るかもしれません。

美味しい食べ方を把握したところで、次に気になるのはシュールストレミングの入手経路です。シュールストレミングは保管の難しさや、缶詰が爆発してしまった際のリスクが高すぎるせいで、日本での入手経路はかなり限られています。

では、いったいどんな経路でシュールストレミングは入手出来るのでしょうか。おすすめの入手法と、なぜシュールストレミングは入手手段がこんなにも少ないのかを説明していきます。

シュールストレミングを日本で手に入れるには、インターネット通販に頼るしか方法はありません。スウェーデンに行った方にお土産で買ってきてもらえばいい、とお考えになった方もいるでしょう。しかし、お土産として持ち帰るのはほぼ不可能です。

何故なら、世界中の多くの航空会社でシュールストレミングは飛行機の荷物に積み込めないからです。飛行機は特性上、気圧の変化がとても大きい乗り物です。気圧の低下でシュールストレミングの缶詰内のガスが膨張し、爆発する危険があります。

シュールストレミングはただ爆発して終わりではありません。強烈な匂いをばら撒き、他の乗客の荷物や乗っている乗員乗客全てに悪影響を及ぼすとして規制されているのです。

ですので、基本的にシュールストレミングを国内に持ち込むには海路を使うしかありません。ヨーロッパから日本までかかる時間は、最短でも37日、長いと2か月以上の時間を要します。

そのため、ネット通販で手に入れることが出来るには出来ますが、温度管理の状況によっては発酵が進み過ぎてしまい、どろどろに溶けて身が跡形もないシュールストレミングが届くということもあります。

ですので、少しでも状態の良い美味しいシュールストレミングを食べたいのであればスウェーデンに行って食べてみることをおすすめします。

世界一臭い食べ物と言われるシュールストレミングは、味、匂い、見た目、全てにおいて癖が強い食べ物ですが、長い間スウェーデンで愛され続け、美味しい食べ方も存在するれっきとした郷土料理の一種と言えるでしょう。

日本でも手に入れることは出来ますので、チャレンジしてみる際は、注意事項をよく読み、覚悟を持って臨みましょう。