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沖縄の桜といえば濃いピンクが特徴の「カンヒザクラ」
サクラといえば、日本を代表する花の一つで、春になると咲く美しい薄ピンクの花が特徴です。しかし、沖縄県や鹿児島県の奄美諸島で見られるサクラは、少し種類が違います。沖縄県や鹿児島県の奄美諸島のサクラは、「カンヒザクラ」といい、紅色に近い濃いピンクをしているのが特徴です。
カンヒザクラがほかのサクラと違うのは、色だけではありません。花の咲き方や開花時期など、個性的な特徴をたくさん持っている興味深い種類のサクラです。
沖縄県で親しまれているカンヒザクラは、1902年に名護市に県立農学校が設立された記念としてカンヒザクラの苗を配ったことから広まっていきました。もともとサクラを見て楽しむという文化のなかった沖縄県ですが、今では毎年サクラの時期になると各地でお祭りが開かれています。
カンヒザクラ(寒緋桜)って?
カンヒザクラの見た目での一番の特徴は、濃いピンク色の花びらです。そして、もうひとつの大きな特徴は、冬に花開くことです。寒い時期に、濃いピンクの花を咲かせることから「寒緋桜」と名前が付けられました。
花の付き方も変わっており、ベルのように下向きに咲き、完全には開花しません。遠慮がちに咲く姿は、見る人の心を打ちます。散り際もまた個性的で、一般的に知られるサクラのように花びらが舞うことはなく、ツバキのように花の形を保ったまま落ちます。
広葉樹であり、葉は秋になると色鮮やかに紅葉し、花と紅葉を楽しめるカンヒザクラは、沖縄県を中心に愛されている桜です。
サクラの原種のひとつ
日本のサクラの原種は9種類あり、カンヒザクラはそのうちのひとつです。原種というのは、品種改良をする際の親となる木のことを言います。冬に咲いたり、花の付き方が下を向いているなどのカンヒザクラの個性的な特徴は、新しい種類のサクラを生み出すうえで重要となっています。
カンヒザクラが原種として生まれたサクラで代表的な「カワヅザクラ」は、オオシマザクラとの自然交配で生まれました。発見された静岡県の河津町では、サクラの時期になるとライトアップやイベントが行われ、多くの観光客が集う人気のサクラとなっています。
元日桜とも
カンヒザクラは、別名を「元日桜」ともいいます。元日桜という名前は、漢字の通り旧暦の正月ごろに咲くことから由来しています。毎年旧正月の時期は変動しますが、1月末から2月の初め頃です。
現在の日本では、旧暦で正月をお祝いすることは少なくなってしまいましたが、カンヒザクラが広く分布する中国や台湾では、今でも重要なイベントとして祝日となっています。日本でも、カンヒザクラが見られる沖縄県では、旧正月の風習を残しています。
ヒガンザクラとは別の種
カンヒザクラは、別名称を「ヒカンザクラ」とも言います。しかし、別の種類のサクラである「ヒガンザクラ」と間違われやすいため、「カンヒザクラ」と呼ばれることが多くなりました。
カンヒザクラとヒガンザクラは、特徴も全く違います。ヒガンザクラは、ほかのサクラより早咲きではありますが、3月から4月の春の時期に花を咲かせます。また、花びらの色も薄桃色であり、本州から九州まで広く分布している桜です。
ヒガンザクラは、日本のサクラの大半を占めるメジャーなソメイヨシノの原種のひとつとして有名な桜です。
中国南部から台湾にかけて分布する
カンヒザクラは、中国南部から台湾に渡り広く分布しています。台湾ではカンヒザクラの実を「山櫻桃」と呼び、野生のカンヒザクラは標高500mから2000mほどの山地に生えているのが特徴です。日本では沖縄県や鹿児島県の奄美諸島など、温暖な南の島で野生のカンヒザクラが見られます。
観賞用だけでなく、台湾など一部の地域では、カンヒザクラの実を砂糖などと煮詰めジャムにし、保存食として利用しています。実だけでなく、塩漬けにした花びらは料理やスイーツの飾りになります。沖縄県もカンヒザクラを食用として利用しており、カンヒザクラを漬けた泡盛などがあります。
カンヒザクラの開花時期は?
カンヒザクラは早咲きのサクラで、日本一開花が早いのが大きな特徴です。早い年では、本州ではまだ真冬の1月末から咲き始め、例年では2月初めごろに見ごろを迎えます。俳句や連歌の季語としては、カンヒザクラは冬の季語に分類されるほど、寒い時期に見られる珍しいサクラです。
沖縄では1月から2月に開花
日本一開花の早いカンヒザクラは、沖縄県から徐々に開花していきます。毎年1月末から2月の初めにかけて開花が始まり、2月上旬には満開のカンヒザクラを見られることが多いです。
南から北上するように開花していく本州のサクラとは違って、沖縄県のカンヒザクラは北から南に向かって花開いていきます。つまり、沖縄北部のやんばるエリアが日本で一番早く桜が見られるスポットとなります。
関東地方より南では2月から3月
カンヒザクラは、沖縄県だけではなく関東より南の地域なら見られるスポットがいくつかあります。代表的なスポットとしては、靖国神社が挙げられます。沖縄県以外の地域のカンヒザクラの開花時期は、沖縄県よりは遅い2月から3月にかけてです。
カンヒザクラはもともと温かい場所で生えているサクラですが、比較的寒さへの耐性が強く、沖縄県より北の地域でも生きていける強い品種です。
カンヒザクラのお花見スポット~鹿児島~
日本のカンヒザクラの主な分布地は沖縄県ですが、沖縄県に一番近い都道府県である鹿児島県にもカンヒザクラを見られるスポットがあります。奄美大島などの南西諸島を中心にみられますが、鹿児島市にある名勝 仙巌園でもカンヒザクラのお花見が可能です。
温かい地域に生きる個性的なカンヒザクラと本州ではメジャーなソメイヨシノのコラボレーションが見られる鹿児島県は、全国的にも貴重なサクラのスポットです。
名勝 仙巌園
名勝 仙巌園は、1658年に当時の薩摩藩主 島津光久によって作られた庭園です。世界遺産にも登録されており、鹿児島のシンボルである桜島をのぞめる名勝 仙巌園には、5種類のサクラが植えられており、本数は約150本に上ります。
2月上旬に咲き始めるカンヒザクラを皮切りに、メジャーなソメイヨシノ、ヤマザクラ、サトザクラなど、開花時期の異なるサクラがリレーのように次々に咲き乱れます。まだ寒い2月から暖かくなり始める4月の上旬まで、長期にわたってさまざまな種類のサクラを楽しめるお花見スポットです。
名勝 仙巌園のカンヒザクラは2月初めごろから徐々に咲き始め、例年では2月中旬頃に見ごろを迎えています。甘い蜜を求め、メジロがカンヒザクラをつついている光景を見られることもあり、写真好きが集まる鹿児島県内でも人気のお花見スポットです。
名勝 仙巌園の中にある島津家の歴史や文化を学べる博物館 尚古集成館では、毎年2月中旬から4月末頃まで、「薩摩のひなまつり」というイベントが開催されています。島津家の人々が大切にしてきたひな人形やひな道具が公開されており、カンヒザクラと一緒に楽しめる催し物です。
営業時間は、8時半から17時半までです。名勝 仙巌園に入るには、入場料1000円が必要です。アクセスは、鹿児島中央駅からバスに35分ほど乗り、仙巌園前停留所で降りてすぐです。
住所 | 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1 |
電話番号 | 099-247-1551 |
奄美フォレストポリス
奄美フォレストポリスは、鹿児島県の南の海上に位置する奄美大島の東京ドーム7つ分の面積がある森林公園です。島の真ん中にあり、奄美諸島最高峰の湯湾岳を横目にお花見が楽しめる、自然豊かなお花見スポットです。
園内は、宿泊できるバンガローやキャンプ場があるキャンプゾーンや家族で遊べるゴルフ場やアスレチックがあるふれあいゾーン、自然を満喫できる渓流ゾーンや水辺のゾーンの4つに分かれています。野生動物が見られるナイトツアーもあり、一日中遊べます。
奄美フォレストポリスのカンヒザクラは、鹿児島県の本土よりも少し早い1月下旬から開花し始め、2月中旬ごろまで楽しめます。水辺の広場の桜並木を中心に、園内には約1000本のカンヒザクラが植わっており、毎年1月下旬にあるイベント「まほろば大和ウオーキング大会」と一緒に楽しめます。
園内に食事施設がありますが、月曜日が定休日で、営業時間も11時半から14時半までと短いので注意しましょう。奄美フォレストポリスへは、奄美空港からだと車で1時間半、奄美大島の船の玄関口である名瀬新港からだと車で1時間ほどで行けます。
住所 | 鹿児島県大島郡大和村大字名音1476 |
電話番号 | 0997-58-3166 |
本茶峠
本茶峠は、鹿児島県に属する奄美大島の中心地 名瀬町と龍郷群町にまたがる峠です。数ある奄美大島のカンヒザクラお花見スポットのなかでも、約1000本にわたる大規模な桜並木が見られます。峠沿いに並んだカンヒザクは、昔に龍郷群の人々が植えたことがはじまりだとされています。
本茶峠は交通の難所として有名でしたが、現在は近くに本茶トンネルができたため、本茶峠の道を進む車は少なく、昔からある峠沿いの道のカンヒザクラは穴場のお花見スポットです。
本茶峠には奄美空港からは車で25分、海の玄関口である名瀬新港からは車で30分の場所にあります。名瀬新港から本茶峠を抜けた先にある奄美自然観察の森の駐車場入り口のカンヒザクラは、奄美大島のカンヒザクラの開花時期を決める標本木です。奄美大島でお花見ドライブを楽しみましょう。
カンヒザクラのお花見スポット~沖縄~
日本のカンヒザクラの主な生息地である沖縄県は、カンヒザクラを見られるスポットが県内のあちこちにあります。沖縄県のお花見は、本土のようにお酒やグルメを楽しみながらするのではなく、散歩をしながら花を愛でるスタイルが一般的です。
島の北から南に向かって下っていく桜前線も、本土とは異なる特徴です。沖縄県への旅行といえば海を楽しむ夏をイメージしますが、珍しい冬のサクラを見に行く旅も沖縄旅行の定番になっていくかもしれません。
与儀公園
与儀公園は沖縄本島の中心市街地 那覇市にあり、公園内に置かれた蒸気機関車が印象的な公園です。沖縄本島の南部に位置するため、少し遅めのカンヒザクラを楽しめます。2月になると少しずつ花開き始め、2月中旬から下旬にかけて見ごろを迎えます。
与儀公園は那覇市内では有名な桜のスポットで、園内には約400本のカンヒザクラが植わっています。特に、園内を流れるガーブ川沿いの桜並木が見事です。南国特有のヤシの木とカンヒザクラが同時に見られる珍しい光景は、写真映えもします。
カンヒザクラが見ごろを迎える毎年2月中旬から下旬にかけて、「なはさくらまつり」が行われます。苗木や果物の物販など、さまざまな出店が並びます。フランダンスや民謡ショーの沖縄の文化に触れられるイベントもあり、見どころ満載です。
与儀公園は、国際通りから徒歩約15分で行けます。近くにはかわいらしい食器が買える「やちむん通り」など観光スポットも目白押しで、沖縄観光の間にサクッとお花見ができるスポットです。
住所 | 沖縄県那覇市寄宮1-1-1 |
電話番号 | 098-951-3239 |
名護中央公園
名護中央公園は沖縄県北部の名護市にある、夜景とサクラの名所です。日本では最も早くカンヒザクラを見られる沖縄県の中でも、ひときわ早く開花が始まります。1月中旬から花が咲き始め、例年の見ごろは1月下旬から2月上旬にかけてです。
約20000本ものカンヒザクラが植わっているという広い敷地内では、至る場所でカンヒザクラを見られ、沖縄県を代表するサクラの名所です。遊歩道は2kmにわたってカンヒザクラを楽しめ、園内一番の人気お花見スポットとなっています。
1月下旬から始まる「名護さくら祭り」は、日本一早いサクラ祭りとして人気です。名護中央公園へは、那覇空港から車で約1時間です。
住所 | 沖縄県名護市字名護5511 |
電話番号 | 0980-52-7434 |
八重岳 桜の森公園
八重岳 桜の森公園は標高が450mある沖縄本島で2番目に高い八重岳にある公園です。芝生広場やたくさんの種類の遊具があり、家族連れが集まります。山の斜面を利用した滑り台が、特に人気です。
園内には約7000本のカンヒザクラが植わっています。八重岳 桜の森公園は、1月下旬から始まる「もとぶ八重岳桜まつり」のメイン会場となっています。ステージイベントや出店のほか、スタンプラリーやフォトコンテストもあり、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。
八重岳 桜の森公園は、沖縄本島北部に位置しているので、1月中旬から徐々に咲き始め、毎年1月下旬から2月上旬に見ごろを迎えます。道路の両側に咲いている大きなカンヒザクラは、濃いピンクのトンネルをくぐり抜けているようなドライブを楽しめます。
那覇空港から八重岳 桜の森公園までは、車で1時間半ほどかかります。八重岳近くには美ら海水族館や今帰仁城跡など、沖縄県を代表する観光名所もあり、沖縄旅行のプランにも組み込みやすいお花見スポットです。
住所 | 沖縄県国頭郡本部字並里921 |
電話番号 | 0980-47-6688 |
「カンヒザクラ」で一足早くお花見を楽しもう!
沖縄地方を中心に生息するカンヒザクラは、日本で一番早く開花する冬のサクラです。春までお花見を待てない方は沖縄県や鹿児島県にカンヒザクラを見に出かけてみましょう。色や咲き方など、見た目も本州のサクラとは一味違う個性的なカンヒザクラは、人生で一度は見ておきたいサクラです。
沖縄県の早咲きのカンヒザクラは、お花見シーズンの前に見ごろのピークを迎えるため、比較的花見客が少ない環境でゆっくり観察できるのも嬉しいお花見スポットです。