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神戸の山奥にある摩耶観光ホテルとは?
摩耶観光ホテルは、廃墟マニアたちの間では通称マヤカンと呼ばれている廃墟です。摩耶観光ホテルは、神戸市灘区にあります。摩耶山の中腹辺りに建てられており、1929年の営業開始以降、様々な理由で廃墟化と営業再開を繰り返した稀有な経歴を持つ廃墟です。
アールデコ調の建物である摩耶観光ホテルは、最後の営業停止(1993年)からかなりの年月が経過して完全に廃墟化しております。しかし、朽ちた建物は哀愁を放ち、自然物に飲み込まれた姿は侘しさを感じつつも、荘厳な独特な雰囲気を醸し出しています。
女王たる摩耶観光ホテルの雰囲気を生で味わいたいがために、摩耶観光ホテルを訪れる廃墟マニアたちは後を絶ちません。
山の軍艦ホテルと呼ばれてきた
摩耶観光ホテルは鉄筋コンクリート造りの建物で、山の中腹から顔を出す無骨な様を見て、当時の神戸の人々は山の軍艦ホテルと呼んでいました。
元々、摩耶観光ホテルは摩耶倶楽部というホテルやレストランを中心とした、山奥の豊かな自然で人々を癒す役割を持った福利厚生施設でした。しかし、1944年に第二次世界大戦の影響を受け摩耶倶楽部は営業を停止してしまいます。
摩耶観光ホテル・廃墟の女王と呼ばれる所以
摩耶観光ホテルは、1回目の廃墟化の後、民間企業に買われ、1961年に高級ホテルとして生まれ変わります。この時、解体された豪華客船の家具や装飾品を買い取り、西洋風の豪勢な建物にするための大規模な改修工事が行われております。
華美な装飾品を使った内装は、廃墟となった現在も面影を残しており、摩耶観光ホテルが廃墟の女王と呼ばれるようになった一因である、朽ちてなお美しい内観を構成するに至っています。
ちなみに、高級ホテルも台風によりホテルが甚大な被害を受けてしまったがために、1967年に営業を停止しています。その後は1974~93年の間、廃墟に泊まれる学生合宿所として営業をしておりましたが、管理者だった老夫婦が体調不良を理由に管理職を退いてから現在まで廃墟の状態が続いています。
鉄筋コンクリート造りの建物は非常に頑丈です。そのおかげもあり、最後の営業停止から30年近い年月が経とうとしておりますが、建物自体は健在で、侵食してきた自然と混ざり合い、山奥の廃墟ならではの独特の雰囲気を醸し出しています。
人工物と自然の絶妙なバランスや、家具の一部が残されて朽ちているその様子が、廃墟マニアたちの心に刺さり、おすすめの廃墟スポットとして女王の名を冠することになりました。
ホテルの施設は残されたまま
摩耶観光ホテルは最後の営業停止以降、阪神淡路大震災の影響で近くの山奥への登山道が封鎖されてしまったこともあり、ほとんど人の手が入らない状態となっておりました。そのため、今もなおホテルとしての面影がありありと残っております。
放置された当時は美しい色合いであっただろう椅子や机などの家具や、実際に使われていたであろう炊飯器などの家電が残され、山奥の自然と一体化して朽ちています。
使用感や生活感が残っていることで、朽ちて行ってしまったという実感が感じやすくなります。人工物の使用感と山奥の自然の絶妙な景観のバランスが、摩耶観光ホテルが廃墟の女王と呼ばれている一因と言えるでしょう。
摩耶観光ホテルは近代化遺産へ登録の動き
摩耶観光ホテルは現在、前畑洋平氏を代表とするNPO法人「J-heritage(ジェイ・ヘリテージ)」の手によって近代化遺産への登録が進められております。
ジェイ・ヘリテージの主な活動は、摩耶観光ホテルのようなホテルの他、鉱山や工場などの近代化に貢献した施設の廃墟を、美しい景色の1つとして後世に残していくための働きかけをしています。
さらに、対象となった廃墟を観光地として地域に還元することで、廃墟の保全を図っていくと共に、在りし日の栄光や廃墟の美しさを世間に広げていく活動をしております。廃墟スポットのツアーも組まれており、廃墟スポット巡り初心者でも廃墟が楽しめるようになっております。
不法侵入が後を絶たなかった
ジェイ・ヘリテージの方々が、廃墟スポットの保全に力を入れていることには、理由があります。それは、廃墟マニアたちの不法侵入が絶えなかったからです。廃墟は心霊スポットとなることも多く、肝試しに来る人も非常に多いのです。
廃墟と言えど、所有者がいます。多くの場合は私有地です。入った段階で当然罪に問われてしまいます。ですが、侵入「する側」よりも、「される側」の方が実はリスクが高いのです。
何故なら、無断で侵入した人が怪我をしてしまった場合、ケースにもよりますが、基本的に怪我の責任は土地の所有者にあるからです。つまり、勝手に入ってきたにもかかわらず、その人が怪我をしたら、その治療費やらは土地の所有者が負わなければいけないのです。
そのため、当然土地の所有者は柵や立て札による呼びかけで対策をしますが効果は薄く、後を絶たない不法侵入者に頭を悩ませることが多かったといいます。
不法侵入者問題の解決策として、取り壊しの選択をする所有者も多くおり、取り壊されて姿を消した廃墟も数多く存在します。ジェイ・ヘリテージは、不法侵入により廃墟と言う貴重な文化財が失われることを防ぐために活動をしているのです。
廃墟を文化財として管理し、観光地にすることで所有者や地域に還元していくと共に、廃墟を見たい人達が、こそこそ不法侵入しなくてもいいような環境や制度を作っているということです。
阪神淡路大震災後から立ち入り禁止に
山奥へ向かう登山道が閉鎖されたということは前述した通りですが、阪神淡路大震災で摩耶観光ホテルが受けた被害も決して少なくはありませんでした。そのため、現在は崩落による侵入者の怪我を防ぐために摩耶観光ホテル内の立ち入りが禁止されております。
ジェイ・ヘリテージの手も加わり、現在の摩耶観光ホテル内には24時間稼働している監視カメラやセコムが導入され、中への侵入はほぼ不可能となりました。
しかし、ジェイ・ヘリテージの代表である前畑洋平氏は、やはり廃墟の女王たる摩耶観光ホテルの魅力を最大限味わうには内観も見て欲しいという想いを吐露しておりました。
現在は外観しか見れませんが、将来的に内観も見学できるように環境を整えていきたいと話しており、現在は着々と安全確認を進めているということでした。
クラウドファンディングで700万集金
ジェイ・ヘリテージは、摩耶観光ホテルを保管するために目標額500万円のクラウドファンディングを行っておりました。予定よりも40日以上も早く目標額を達成し、さらに金額は目標額である500万円を上回る700万円が集まりました。
それだけ、山奥の女王である摩耶観光ホテルを遺したいと思っている人が多くいるということが分かる結果と言えるでしょう。
集められたお金は、前述した監視カメラなどのセキュリティ強化の他、更なる劣化を食い止めるために使われています。他にも、近代化遺産とするための調査や、再び立ち入れるようにするための安全確認調査のための資金として使われる予定です。
摩耶観光ホテル調査ツアーの内容について
クラウドファンディングは、出資してくれた方の金額によって様々な見返りがあります、摩耶観光ホテル保存プロジェクトでは、見返りの1つとして摩耶観光ホテルの調査ツアーに参加出来る権利が与えられていました。
2018年7月21日に調査ツアーは行われております。撮影可能で、SNSなどのメディアへの公開も許可されていたので、参加者の手によって廃墟の女王、摩耶観光ホテルの現在が公開されました。
この時の調査では、主に摩耶観光ホテル内の施設の実測、落下物のスケッチや写真撮影を行っていたようです。集められたデータを元に、現在も安全確認作業や、崩落が予測される場所の維持、保全が進められています。
また、集めたデータを使ってフォトグラメトリー(写真のデジタルデータを元に作られる3DCGモデルのこと)も2019年に作られ、あらゆる面から保全のためのアプローチが行われています。
山頂のショップで営業当時のポストカードをゲット
摩耶観光ホテルの状態や周りの景色から、山奥にあって周囲には森しかないという印象を受ける方が多いでしょうが、実は摩耶観光ホテルがある神戸の摩耶山は神戸有数のナイトスポットと言われており、神戸の街並みの美しい夜景が楽しめる場所でもあるのです。
ケーブル・ロープウェイが麓から山頂まで通っており、山頂には「摩耶ビューテラス702」というゲストハウスが建てられています。
神戸の街並みを眺めながらカフェで食事を楽しむことが出来る他、予約をすればバーベキューが楽しめるバーベキューテラスもありますので、観光にも最適なスポットと言えます。バーベキューセットは全てレンタルしてもらえますので手ぶらで行っても問題ありません。
摩耶ビューテラス702内には売店もあり、在りし日の摩耶観光ホテルの写真を撮ったモノクロ写真が印刷されたポストカードが販売されています。写真の中の摩耶観光ホテルの姿は活気に満ち溢れており、現在の廃墟とは違いつつも、面影があります。
内観が見学できるようになったあかつきには、ポストカードを持って現在の様子と比べに行くというのも面白いでしょう。
現在も作りは変わらず
調査の結果、阪神淡路大震災で手痛いダメージを負った摩耶観光ホテルですが、現在も大きな崩落などは無く、営業していた時代と間取りはほぼ変わっていません。
しかし、完全に崩落はしていないものの、今にも崩れてしまいそうな場所は多々あり、内観を見学出来るようになるまでは、残念ながらまだ時間がかかりそうです。
摩耶観光ホテルは心霊スポット?
廃墟と言えば心霊スポットとしても人気が高く、実際に心霊現象が目撃されたとされる廃墟心霊スポットもあります。摩耶観光ホテルも心霊スポットと呼ばれ、ネットでは神戸の心霊スポットとして紹介している心霊系やオカルト系のサイトも多々見受けられます。
しかし実際はと言うと、心霊体験の話もあるもののとてもありきたりで些細な心霊現象のものが多く、他の錚々たる心霊スポットたちに比べると若干見劣りする心霊エピソードばかりです。
心霊系とは少し違いますが、かなり信憑性の高そうな噂もありますが、、実際は違っていたと当時の利用者の方から証言が取れている噂もあります。どんな噂かと言うと、「摩耶観光ホテルに落ちているタイヤはB29が落としていったものだ」というものです。
ちなみに、B29とはアメリカが第二次世界大戦の時に主力として投入していた爆撃機のことで、日本の空襲の際には大体この爆撃機が飛来していました。
神戸も空爆の被害があった都市ですので、信憑性がかなりある説に思えますが、実際は落とされたものなどではなく、摩耶観光ホテルの屋上でベンチとして使われていたタイヤでした。
ですが、タイヤがB29に使われているタイヤと同じ型であることは事実です。実際はベンチでしたが、当時の時代背景などを鑑みると、爆撃機から落とされたという説が出るのも無理はないと言えるでしょう。
摩耶観光ホテルは山奥にあり、昼間でも建物の中は薄暗く、廃墟特有の雰囲気は確かに心霊現象を連想してしまうような気味の悪さを感じることもあります。心霊現象が起きそうな雰囲気が、摩耶観光ホテルが心霊スポットと呼ばれる所以でしょう。
しかし、心霊現象の目撃談や体験談の少ない摩耶観光ホテルは、心霊スポットとしてはあまり期待できないでしょう。
摩耶観光ホテル周辺の観光スポット
摩耶観光ホテルがある神戸市灘区周辺には、摩耶観光ホテルがある摩耶山に登る以外にもたくさんの観光地があります。せっかく神戸に来たのですし、摩耶観光ホテルだけでなく、様々な場所に行ってみたいと思うことでしょう。
そうなった方のために、摩耶観光ホテルのある神戸市灘区近辺のおすすめの観光スポットをご紹介していきます。
1:掬星台
大切な人と神戸に旅行に来たという方であれば、是非行ってみていただきたい観光スポットが、摩耶山山頂にある「掬星台(きくせいだい)」です。
神戸の街並みが一望出来る掬星台は、昼間の眺めもとてもよいですが、最も注目すべきは夜景です。掬星台の夜景は日本三大夜景の1つにも数えられており、カップルに非常に人気のデートスポットとしても名を知られております。
神戸の中心地である三宮からのアクセスも非常によく、神戸市バスの18系統に乗り、「摩耶ケーブル下」という名前のバス停で降りれば、あとはケーブルカーに乗るだけと言う良アクセスとなっております。
ケーブルカーに乗ると、中間地点である「虹の駅」に行くことが出来ます。それ以降はロープウェイに乗り換えて山頂にある掬星台を目指します。掬星台は標高690メートルの位置にあります。夏でも少し肌寒さを感じる場所ですので、温度調節が出来る服装をチョイスすると安心です。
ちなみに、掬星台の名前は、星が手で掬えてしまいそうなくらい近い場所というところから来ているそうです。名前からして非常にロマンチックな場所です。
住所 | 兵庫県神戸市灘区摩耶山町2-2 |
電話番号 | 078-861-2998 |
2:神戸市立王子動物園
130種もの動物を見ることが出来る兵庫県内でも最大級の動物園が「神戸市立王子動物園」です。ライオンやゾウなどのメジャーどころはもちろん、動物園のアイドル、パンダや最近注目のマヌルネコなども見ることが出来ます。
さらに、ただ動物が見れるだけではなく、王子動物園では動物科学資料館という動物たちの生態系や生活の様子などを、ジオラマ、骨格標本、模型、映像等々様々な媒体を通じて学べる場所があります。
書籍を閲覧したり、ビデオを見たりする学習スペースも用意されているので、小学生の自由研究などにも使えるスペースとなっております。
さらに、王子動物園内には、重要文化財として指定されている英国人のE・H・ハンター氏が住んでいた邸宅、通称「旧ハンター住宅」があります。
当時の富裕層の英国人がどのような家屋を好んでいたか、というのが良くわかる標本として遺されており、異人館と呼ばれて日本各地に存在しています。旧ハンター住宅は、神戸の異人館の中で最も大きいと言われております。
旧ハンター住宅は館内の見学が可能です。ただ、見学が出来る日時が決まっております。詳しい日時は王子動物園の公式ホームページに乗っておりますので、旧ハンター住宅の館内を見たいという方はしっかりチェックしておくと良いでしょう。
住所 | 神戸市灘区王子町3-1 |
電話番号 | 078-861-5624 |
3:摩耶山 天王寺
緑豊かな山奥にある秘境のお寺のような雰囲気を醸し出しているお寺が、摩耶山にあるお寺、「天王寺」です。646年に法道仙人が開創したことで始まったとされるお寺です。
山奥にありそうな雰囲気ですが、掬星台と同じくケーブルカーとロープウェイで気軽に行ける山奥です。六甲山は雲が発生しやすい山と言われており、雲が発生したときの天王寺は仙人でもいそうな山奥の秘境といった雰囲気に包まれるためパワースポットとしても有名です。
住所 | 兵庫県神戸市灘区摩耶山町2-12 |
電話番号 | 078-861-2684 |
摩耶観光ホテルの基本情報
では、最後に廃墟の女王への謁見の仕方、摩耶観光ホテルまでのアクセスをご紹介していきます。電車で、車でと様々な方法がありますが、摩耶観光ホテルに行くには、摩耶ケーブル駅からケーブルカーとロープウェイを利用したアクセス法が最も楽なアクセス法となります。
ですので、本項では摩耶ケーブル駅までの各交通機関を利用した道筋をご紹介します。摩耶ケーブル駅まで行ければ、後はほぼ迷うことはないでしょう。
車でのアクセス
自家用車で行きたいとお考えの場合は、ケーブルカーやロープウェイを利用しないほうが良いでしょう。なぜなら、摩耶ケーブル駅には駐車場が無いためです。
しかし、自家用車でも摩耶山は登ることが出来ます。掬星台から徒歩10分ほど離れた場所に駐車場がありますので、利用すると良いでしょう。山奥とはいえ、しっかり整備された場所となっておりますので、掬星台から離れていますが道筋はとても楽です。
掬星台があるのは、摩耶ロープウェイの星の駅です。女王たる摩耶観光ホテルがあるのは星の駅の1つ手前の虹の駅近辺となりますのでロープウェイを使って摩耶山を下る必要がありますので注意しましょう。
電車でのアクセス
電車を主に摩耶観光ホテルを目指すのであれば、バスを合わせて使うのが最も楽な手段です。神戸の中心地である、JR三宮駅からは神戸市バスが出ております。摩耶ケーブル駅へと向かうのは、頭に18と表示されている、18系統のバスです。
20分ほどバスに揺られると、摩耶ケーブル下という名前のバス停に着きますので、そこで下車しましょう。
王子動物園などをついでに利用する場合には、阪急王子公園駅や、JR灘駅なども良いでしょう。上記2駅には、「坂バス」という名前の観光バスが通っております。坂バスも摩耶ケーブル下のバス停に停車します。所要時間は10分ほどです。
しかし現在、廃墟の女王、摩耶観光ホテルは前述した通り立ち入り禁止区域となっており、セキュリティも厳しくなっております。無理に柵を超えようとしたりすると警察沙汰にもなりかねませんのでやめましょう。
では、現在摩耶観光ホテルを見たいという時はどうすればよいのかと言うと、月に1~2回ほどの頻度で行われている摩耶山ガイドウォークに参加するという手があります。
非常に倍率の高い狭き門となっておりますが、現在法に触れることなく女王を生で見る唯一の手段と言っても過言ではありません。摩耶山ポータルサイトにて、日程の確認や、予約申し込みが出来るようになっておりますので、興味がある方はチェックしておきましょう。
摩耶観光ホテルは魅力的な廃墟!
神戸の山奥に鎮座する廃墟の女王、摩耶観光ホテルは美しさで数々の廃墟マニアを魅了し、廃墟で日本初の文化遺産となるか否かの瀬戸際にある注目の廃墟です。今後の行方に目が離せない場所と言えるでしょう。