大分県は、九州の北東部です。独特な形状で、湯布院や別府は九州の温泉郷として有名です。
大分弁は隣接する福岡県とは少々異なり、面白い語尾がかわいいと人気です。
温泉や素晴らしい景観など観光スポットが盛り沢山の大分を訪れる前に、大分弁をぜひ覚えてみましょう。
大分弁でがんばれは「がまだせ」?
九州地方は、かなり大きなひとつの島ですので、方言もかなり多彩です。
例えば福岡県では「がんばれ」を標準語と同様、「がんばれ~」や「がんばらんね~」とも言います。しかし、大分では「がんばれ」を「がまだせ~」と言います。
「がんばれ」と「がまだせ」とは同じ意味でも、かなり印象が違います。なぜこのような方言の特徴に違いが生まれたのでしょうか。
大分県は、険しい山に囲まれ、昔から他県との交流が少なかったためという説があります。しかし、隣接する北部の福岡県と共通する語尾もあります。
福岡から大分とで共通する語尾のひとつに「~けん」「~たい」があります。
これは九州北東部でよく使われる語尾の特徴です。「~たい」は「~だよ」と断定する語尾です。
例えば「お前が遅れたけん、バスに乗れんかったったい」というように使います。「~けん」は「~だから」という意味です。
「田中君真面目やけん、試験は大丈夫ったい」と女の子からかわいい激励を受けたら男子は嬉しいでしょう。
また「~と」は「なんばしよっと?」(何してるの?)「明日の宿題しちょっと」(明日の宿題しているんだよ)というように、疑問文や肯定文に使われます。
語尾の「~と」「~たい」は男女共通に使われます。女子の「疲れたとー」という語尾はかわいいと人気です。
「なんばしよっと?」の「ば」は接続詞で、「~を」という意味です。また「~ばい」という語尾も女の子が使います。
「~ばい」は博多と大分県日田市でよく使われます。福岡や大分の女の子が「あんたばばり好いとるばい」と告白したら、男性は胸がときめいてかわいいと感じるでしょう。
「~と」は大変頻繁に使われる九州北東部方言の語尾です。現在進行形にしたい場合は「この靴汚れたけん、磨いとーとよ」(磨いているんだよ)と言います。
また「~たい」も九州弁らしい特徴の語尾で、「もう寝るったい」は「もう寝るよ」となります。
九州北東部は、一般的に語尾以外は標準語とあまり変わりません。
また「しよっと?」には更に「ね」を付けて「なんばしよっとね?」(何しているの?)とも言います。「しよっと?」を「しょーと?」と伸ばしたりもします。
ここで、「がんばれ」という言葉は、大分弁では「がまだせ~」となる話に戻りましょう。「がま」というのは「精力」という意味です。
マラソンなどで、「田中君、がまだしえー!」(がんばれー!)と使います。試合でも「今日はみんながまだせや」(がんばれよ)と言います。
つまり大分弁の「がまだせ」は「力を出せ」の「力」が「がま」になり、「がんばれ」という意味になったのです。
「がまだせ」は一見面白い言葉ですが、標準語の「がんばれ」よりも大分弁の「がまだせ」の方が「力を出せ」という本来のニュアンスを表現しています。
「がんばれ」という意味の大分弁「がまだせ」は「がまださな」とも変化します。登山同好会で、皆で富士山五合目を目指しているとします。
グループが汗をかいている場合、リーダーが「あとちょっとで五合目やけん。がまださないけんね」(がんばらなくちゃね)のように使います。
また大分弁「がんばれ」=「がまだせ」は、例えば恋の相談などに使われます。
男子同志で喫茶店にいる場合、A君が「あん子に告白するっちゃ、勇気なかっと」(あの子に告白する勇気が出ないな)と言うと、B君が「おう、がまだそうえー」(ほらがんばれ)と励まします。
大分弁の受験生が「センター試験ばできんかったっちゃ」に対して友人が「ばってん第一志望はがまだせ」と励まします。
「ばってん」は大分弁で「でも」という意味です。「じゃけん第一志望はがんばれ」と言う福岡とは全体に雰囲気が違います。
「がんばれ」という意味の「がまだせ」という大分弁には、面白い特徴があります。
しかし、「がんばれ」の「がまだせ」は、大分県だけでなく、福岡県や熊本県でも通じる方言です。「がまだせ」の語源は、長崎県最南端の島原半島と言われており、熊本から大分に伝わりました。
大分の方言「大分弁」とは
大分弁は、標準語や隣接する福岡弁に似ている部分があります。語尾なども福岡県の方言と同じ特徴があります。しかし、大変独特の言い回しや言葉が大分弁にはあるため、九州圏外から観光・旅行に来た人には意味が通じないケースが非常に多いのです。
大分弁は大きく分けて5種類
大分弁は、地域によって5種類に分類されます。接頭語や接尾語の特徴が異なったり、隣接する福岡県の影響を受けるなどで5種類にもなったのです。また、海に面しているため、本州や四国の言葉と混合し、独特な方言になったという歴史があります。
「東北海岸方言」
東北海岸方言は、大分県でも瀬戸内海に面した地域の大分弁です。九州全体は人間の形状に似ています。九州の右肩部分を担うのが大分県です。東北海岸方言は、大分でも杵築(きつき)市・国東(くにさき)市などで使われています。
国東半島は、九州北東の周防灘(すぼうなだ)に大きく突き出した、丸い肩のように見える形状の部分です。杵築市から国東市の海岸線には、奈良から平安時代にかけて数多くの寺社が築かれました。そこで、国東半島は古くから「み仏の里」と呼ばれています。
国東半島の東北海岸での大分弁には、他の地域と共通点が数多くありますが、接頭語に特徴があります。「しゃあしい」「しゃーしい」は、「うるさい、うっとうしい、疲れた」という意味です。「ずーりー」は「ずるい」、「じゃあ」は「そうだね」と同意を示します。
「南部海岸方言」
温泉で有名な別府市・湯布市南部に、大分県庁所在地の大分市があります。大分市の海に突き出た部分から四国愛媛県との間の海域を、「豊後(ぶんご)水道」と言います。津久見市南部から大分市に至る、豊後水道周辺の地域で使われている方言を「南部海岸方言」と呼びます。
南部海岸での大分弁は、東北海岸方言と似通っています。しかし、古くから愛媛県との交流が深く、四国の方言とも混合しています。南部海岸の大分弁は、他の大分県の地域よりも、語尾を伸ばす言い方が多いのが特徴です。
「西部方言」
「西部方言」はまさに大分県西部で話されている大分弁です。玖珠(くす)町、日田(ひた)市、中津市山間部の方言が西部方言です。中津市は福岡県、日田市南部は熊本県と接しています。そこで熊本県の肥後(ひご)弁と同じように、語尾に「ばい」がつきます。
大分弁で語尾に「ばい」を使う地域はほとんどなく、熊本県と接する日田市に限られていると言われます。またそれ以外の西部方言で、「~だから」を意味する「~けん」は「~き」となります。「呼ばれているから」は「呼ばれちょーるき」と言います。
「~き」は高知県土佐弁の特徴でもあり、大分県と四国との交流の歴史が見えてきます。土佐弁では「これを教えちちゃろうき」(教えてあげるから)と言います。土佐弁の語尾が大分に伝わり、「大分弁はきつい感じ」とも言われるようになりました。
また「さ行」は「しゃー」となり、「せんせい」は「しぇんしぇー」、「タカセさん」は「たかしぇしゃん」と発音します。熊本弁の「どん」の影響を受けて、「~様」の代わりとして「お医者様」を「いしゃどん」と言います。
「北部方言」
「北部方言」は、県庁所在地の大分市北部であり、「地獄温泉」で大変有名な別府市から北部の宇佐市、中津市で用いられる大分弁です。中津市は福岡のすぐ隣です。特に北部方言では中津方言の大分弁が際立っており、福岡弁の特徴が大変よく見られます。
例えば国東半島でも使われる「しゃーしい」(うるさい)や、福岡県でも用いられる「なんちかんち」(そんなこと)などが中津方言です。「なんちかんち言うても今ば勉強が大事やけんね」とのように言います。
また「いらんこつ」は「余計なこと」という意味です。「なんしいらんこつするね」(なんで余計なことするんだ)と言います。「なんちかんち」や「いらんこつ」は福岡でも博多でよく聞かれますが、もとは大分弁です。
語尾に「っち」「っちゃ」がよく使われるのは、中津方言の特徴です。また大分弁全体の特徴をよく表しています。「いらんこつ」の「つ」は、「っち」という語尾が変化したものです。
「うちのカーテン買い替えてっちゃち言うとるっちに」(私のカーテン買い替えてと言ってるのに)と娘が言ったとします。それに対し、お母さんが「そんこつ言うたっち、なんもならんっちゃ」(そんなこと言っても何もならないよ)と使います。
「南部方言」
「南部方言」は、県庁所在地の大分市から南部の豊後(ぶんご)大野市や佐伯市で使われる大分弁です。大分県南部は宮崎県なので、宮崎方言の影響を受けています。南部方言の語尾は特徴的で、「とぅまらんね」(つまらん)というように、「つ」を「とぅー」と発音します。
また、「ち」を「てぃー」と発音するのも南部方言の特徴です。「このコーヒーあてぃーごたる」(このコーヒー熱いみたいだね)「ぬくいよかなんぼかよかっと」(温かいよりもだいぶいいよ)のような会話が聞かれます。
もともといくつもの小さな藩に別れていたため
大分弁が独特なものになった背景には、山に囲まれ、他県との交流が少なかったということが原因です。1600年頃から1871年(明治3年)頃までの270年間、大分県内には9つもの小さな藩が存在していました。
北西部には中津藩、北東部には臼杵(うすき)藩、府内藩(大分市内)、南部には佐伯藩、岡藩(大分市西部竹田市内)などが置かれました。その他には杵築(きつき)藩(国東半島南部)、森藩(中津市南部玖珠町)、日出(ひじ)藩(日田市内)、高田藩(豊田高田市)が存在しました。
森藩のみが森陣屋という衛兵の詰め所跡を造りました。他の藩は、それぞれ中津城や臼杵城などを築いています。大分県内に多数の方言があるのは、江戸初期から明治初期に渡って、県内が9つの藩に分かれていたことも原因です。藩と藩との間では、人々は自由な交流が困難だったのです。
大分の方言「大分弁」の特徴
それでは、大分弁の特徴には、他にどんな点があるでしょうか。全体的に大分弁は、他の九州弁よりも知名度がない傾向があります。しかし、大分弁は、「がまだせ」のように、大分弁だけの独特な言い回しや面白い表現が多く、奥の深い方言です。
九州方言の中ではやや異質
大分弁はかわいい単語もあれば、「言い回しが厳しい、きつい」とも言われる、不思議な方言です。原因は、中国や高知県の方言などが混合したことです。「それはあんげにあんで」(それはあそこにあるよ)や、「あん親父げってんじゃー」(あの親父頑固だな)には九州弁らしさがありません。
「て」を「ちぇ」や「で」を「ぢぇ/じぇ」と言う傾向
大分弁の独特の特徴は、助詞の「て」を「ち」「ちぇ」と言うことです。例えば、「あん人ら結婚したっちぇ」(したんだって)「ちょっとここ見ちくり」(見てくれる?)「さっきから待っちくり言うとんのじゃ」(待ってくれと言ってるんだよ)とのように「ち」を多用します。
「ち・ちぇ」は、「先生ばなんも教えちくれんちじゃ」(何も教えてくれないよ)と動詞の語尾になります。また「これくれんかちぇ聞きよるんに」(これをくれないかと聞いているのに)のように「~と」との意味でも使います。
また、場所を表す「~で」を「じ」や「じぇ」と発音します。「ユカと学校じぇ会(お)うたばかりっちゃ」(学校で会ったばかりだよ)のように言います。「ち・ちぇ・じぇ」に慣れると、「あの人は大分出身だな」と分かるようになります。
イントネーションは標準語と一緒
大分弁には標準語から遠く離れた方言の要素があります。それでも、イントネーションは標準語と変わりません。イントネーションが同じだからこそ、他の九州弁とは違った大分弁を知らないと、何を言っているのか分かりません。福岡弁に馴染んだ人からは、生粋の大分弁が理解しにくいのです。
昔から九州他県よりも瀬戸内海沿岸地域との交通が盛ん
大分は、地理的に海へと開かれた県です。昔から豊後水道を経て、瀬戸内海での交易が盛んに行われてきました。四国や中国地方との交流も多く、その地方の方言が大分で使われるようになりました。「~しちょるき」「~してくれんかえ」などは、高知県の土佐弁と同じです。
「西部方言」は大分弁の中でも特殊
大分弁の中でも、「~ばい」「~しちょるき」「しゃー」「~どん」といった語尾を用いる西部方言は、大分弁を更に特殊な印象にしています。熊本県と接する日田市では、「あん人の言うごた分からんばい」(あの人のいうことは分からない)のように使います。
「~だから」の意味では福岡弁は「~けん」ですが、大分弁西部方言では「~き」です。「駅で待っちょるき、来てくれんかえ」(駅で待ってるから来てくれる?)と言ったり、「あんしぇんしぇーば俳優ごたる」(あの先生は俳優みたい)との表現には、高知県か熊本県のような響きがあります。
大分の方言「大分弁」の語尾
大分には独自の言葉がありますが、語尾も独特です。福岡と似ている点がありますが、大分弁の語尾は「かわいい」とよく言われます。特に女子が使うとかわいいのです。
「ちょ」
「~ちょ」は「る」と一緒になって「~ちょる」という語尾になります。「おこっちょる?」は「怒っているの?」という意味です。福岡では「おこっとうと?」と言いますので、「ちょる」は大分独特の特徴を表しています。
大分弁の語尾は、小さい子や女の子が使うとかわいい印象です。「田中君、おっちょる?」(田中君、いる?)や、「公園で花火大会やっちょる!」(やってる!)というように、大分では「~ちょる」はよく使われる語尾のひとつです。
「ちょん」
「ちょ」と同様、「ちょん」も大分弁ならではのかわいい語尾です。福岡弁では驚くほど「と」が使われます。「待っとってって言っとったとに、なんで待っとってくれんかったと?」(待っといてと言っていたのに、なんで待っといてくれなかったの?)というほど「と」が多用されます。
この福岡(主に博多)の方言「と」と同じく、大分弁も「ちょん」を盛んに使います。「あんたら英語ば知っちょん?知っちょる子も知っちょらん子もこれからは英語ば知っちょってほしいっち言っちょん! 」と言います。
標準語だと「あんたたち、英語は知ってる?知っている子も知っていない子も、これからは英語は知って欲しいと言ってるのよ!」となります。標準語ではスマートに聞こえますが、柔らかみが欠けてしまいます。大分弁は「ちょん」の多用がかわいい印象をもたらしています。
「~っちゃ」
「~っちゃ」は大分県独自とも言えますが、福岡や佐賀県でも通じます。「~なのは」と文中に使う語尾です。「そげんこつするっちゃ、あん人に悪か」(そういうことをするのはあの人に悪いよ)と使ったり、「ここは試験に出るっちゃ」と文末にも使います。
「そげんこつ」は「そぎゃんこつ」とも言い、「そんなこと」という大分弁です。「そげんこつなり、はよいわ良かったっちゃ」(そんなことなら早く言えばよかったよ)と使います。「~っちゃ」もかわいい大分弁の語尾です。
「~やに」
「~やに」には大阪弁の語尾の影響がありますが、現在は大分弁としてよく使われます。「私を待っちょってくれちょったん?」(私を待っててくれたの?)「そうやに」(そうだよ)と表現します。「あんたんこと好きやにい」(あんたのことが好きなんだってば)はかわいい言葉です。
「~けん」
「~けん」は冒頭でご紹介したように、北九州で頻繁に使われます。「明日は湯布院の温泉に行くけんね」のように使います。福岡と共通しているのが「~けん」です。「大分県は福岡県の隣やけん、いつでも博多に行けるけんちゃが、うちはやっぱり大分が好きっちゃけん」と使います。
大分の方言「大分弁」の面白い単語
大分弁は、複雑な地形と本州との交流、また細かい藩の存在の歴史などによって、九州の他の県とはずいぶん違った方言となりました。多彩な文化を吸収して混合された大分弁には、思わず笑ってしまうような面白い言葉が豊富です。
よだきい
「よだきい」は大分県及び宮崎県で使われる方言です。意味を知らない標準語圏の人が「よだきい」と言うのを聞くと、「きい」という音のためか、やや厳しい印象を感じます。「よだきい」は「面倒臭い・疲れた・億劫だ」という意味です。
「よだきい」の由来は千年前の平安時代にあります。平安時代では「面倒だ」を「弥猛(よだけ)し」と言いました。現代では大分や宮崎弁となり、「てげよだきいっちゃが」(すごく面倒臭いんだけど)と使います。「よだけし」に土佐弁の「~き」が混ざり「よだきい」となったのです。
日本各地の方言のルーツは、平安朝で使われていた古語だったという例が数多くあります。古語は、古来から行き来の少なかった国内で地方に残り、そのまま現代の方言になりました。米国は歴史が浅く、移民の国であり、互いに行き来が盛んだったため、方言がほとんどありません。
せちい
「せちい」は標準語の「切ない」が訛ったものです。しかし「切ない」という哀しい気持ちよりも、「きつい、面倒、嫌だなあ」といった気分を表現する際によく使います。「今日は雨ザーザーふっちょるけん、せちいっちゃのう」(今日は大雨だから嫌だなあ)と表現します。
九州は台風が上陸する地域です。そこで、「また台風が来ちょっと、せちいっちゃありゃせん」(また台風が来てるんだよね、もう嫌でたまらない)とよく言います。「台風でいつもうちはせちい目に遇うっちゃけんね」(台風でいつもうちは面倒な目に遇うんだもんね)と表現します。
天候以外に、人間関係でも使われ、「元カノに会うっちゃちーとせちいけんね」(元カノに会うのはちょっと面倒だな)のように使います。面白い言葉「せちい」は受験シーズンでも登場します。「風邪引いっちょと時に受験はせちいっちゃのう」(風邪引いてる時に受験はだるい)と使います。
えらしい
「えらしい」だけを聞くと、標準語の「えらい」と勘違いしてしまいます。大分弁の「えらしい」は「かわいい」という意味です。「かわいい」を「えらしい」と言うのは面白いものです。
「あそこんこ、えらしいっちゃけん、どうも好きになりよっちゃ」(あそこの女の子かわいいから、なんだか好きになった)と使います。「かわいい」を「えらしい」と言うのも面白い大分弁ですが、大阪や高知県の「ええ」に「らしい」が付いて、「えらしい」となったのです。
「えらしい」は「ええらしい」とも言い、「こんねこざまあねぇええらしいっちゃのう」(この猫はものすごくかわいいなあ)とも表現します。「ざまあねぇ」には面白いイメージがありますが、大分弁では「とても」となりユニークな方言です。
面白い印象の「えらしい」は男らしい大分弁とも言われています。ご主人が奥さんに対し「お前、ほんとえらしいっちゃなあ」と言うと、奥さんは改めて「この人で良かった」と思うでしょう。面白い言葉の「えらしい」は、大分県北部では老若男女問わず使います。
むげねえ
大分弁「むげねえ」も、聞いただけでは面白いと感じる方言です。大分弁は、意味を知らない人がつい「何それ」と笑ってしまう面白い方言なのです。「むげねえ」は面白い印象があるものの、意味は面白いどころか、「かわいそう」という意味なのです。
「むげねえ」という言葉は「ひどい、かわいそうだ」を意味する「むごいねえ」が訛り、大分弁の「むげねえ」になったのです。一般的に老若男女幅広い年代の人が使う言葉です。哀しいことや残酷なことがあった場合に使います。
「そげなむげねえこと、あん人にあったっち知らんかったっちゃ」(そんなにかわいそうなことがあの人に起きただなんて知らなかったよ)や「そげなむげねえこと、えらしい子にするっちゃなあ」(そんなにひどいことをかわいい子供にするなんてねえ)と使います。
なおす
物を片づける時、標準語では「しまう」と言い、壊れている場合は「なおす」と言います。大分弁では標準語と異なります。大分弁で「なおす」は「しまう・片づける」という意味になります。
他の県から大分県に転校してきた子は、同級生や先生に「これなおしよって」と言われて、「何が壊れているんだろう」と困惑します。「どこをなおすの?」「これをなおせばいいっち言いいよるきに、分からんっちゃが?」と言われて、転校生が孤立する場合もあります。
大分の方言「大分弁」のかわいい告白フレーズ
恋の告白は、標準語だとなかなか照れ臭く、言いにくいのではないでしょうか。それは、標準語は言葉がはっきりし過ぎているためです。特に女の子から好きな男性に「私、あなたが好きなんです」は言いたくても言えない台詞です。しかし大分弁では女子からの告白はなぜかストレートに言えます。
「だけん、すきっちゃ!」
「だけん」は「だから」という意味です。大分弁では他にも「だき」がありますが、最近の若者は福岡や熊本方言の影響を受け、「じゃけん」や「じゃき」が多くなりました。「だけん(じゃけん)、好きっちゃ!」(だから好きなんだってば!)は、キュートでストレートです。
「好き・好きよ」というのは照れ臭い台詞です。何だか芝居がかっているようで、言いにくいでしょう。大分の女の子のように「好きっちゃ!」と言うことができれば、サッパリしてかわいい告白になります。「好きっちゃ!」は大分のローカル番組のタイトルでも使われています。
「好きやけん、付き合っちくれんかなぁ」
「好きやけん」は「好きだから」という意味です。大分の男子が「好きやけん、付き合っちくれんかなぁ」と言うのは優しくて気取らない告白です。標準語で「好きだから、付き合ってくれる?」と言うとちょっとキザな印象です。しかし大分弁の告白には心がこもっています。
女の子からは「あんたのこと、好きやけん」とも告白できるのが大分弁の旨味です。また、「あんたばおらんと寂しか」や「寂しかね~」も大分女子のかわいい告白です。「会いたか!」や「なんで会えんちゃね?」も女子から言われると、男子の胸にグッときます。
「しらしんけん好きやに」
大分弁で「一生懸命」は「しんけん」と言います。「真剣」がそのまま方言になったものです。「しんけん好きやに」は(本当に大好きだから)という意味です。「しんけん」は老若男女、大分でよく使われ、「しんけんとべ!」は「一生懸命走れ!」という意味です。
大分弁では「しんけん」に「しら」を付けると、「しんけん」の最大級になります。「しらしんけん」は大分の本格麦焼酎「知心剣」としても販売されているほどです。「しらしんけん好きやに」(もう心から好きなんだよ)の告白には「やに」がかわいさを添えています。
大分弁は語尾がかわいい方言
九州弁といっても、様々な地方に分かれています。その中でも、大分弁の語尾はとてもかわいいと大人気です。大分弁はある程度、標準語に近い部分もありますが、大分県独自の温かい方言を知っておけば、豊かな自然や温泉に満ちた大分への旅が一層楽しいものとなるでしょう。