とちの実(栃の実)は、日本では古くから主食代わりに食べられてきた食材です。
アクがあるため下処理をするのが食べ方の基本ですが、下処理済みのとちの実は素朴な味と食感が楽しめます。
そこでとちの実の食べ方を、下処理法や簡単レシピと併せてご紹介しましょう。
とちの実とは?
見た目だけだと真っ黒な栗のように見えるとちの実素材ですが、栗とは異なる樹木・トチノキの種子です。
トチノキは高級木材として重宝されていますが秋になると着果し熟すと自然に落下します。
果実そのものは食用としての食べ方にはできません。
その代わり熟した果実の内側にある種子は食用としての食べ方ができます。
しかも食用としての食べ方は非常に歴史が古く、縄文時代の遺跡からはとちの実素材を食用としていたことが確認できる施設の出土もあります。
とちの実素材はたんぱく質とでんぷんの含有量が多いため、主に主食として食べられていました。
しかしアクが強く下処理にも手間がかかるため、飢饉など食糧難の際に非常食として備蓄していた時代もあります。
そんなとちの実素材ですが正しく下処理をすればアクも気になりませんし、独特な食感と素朴な味が楽しめるので今では郷土料理としての食べ方や加工して土産物品にするなどの方法で食べられています。
とちの実の食べ方(下処理方法)
主食としての食べ方もできるとちの実素材ですが、時代とともに非常食としての食べ方に変わっていった背景には下処理作業に手間がかかることが関係しています。
トチノキ種の種子であるとちの実素材は非常にアクの強い食材です。
しかもアクの強い食材の中でも特にアク抜き処理に手間のかかるのがとちの実素材なので、稲作が盛んになってからは主食としての食べ方はあまりされなくなりました。
なにしろ主食代わりとされていたどんぐり素材よりもアク抜き処理に時間がかかるため、とちの実素材を積極的に主食として食べるのは非効率なのです。
最もシンプルなアク抜き処理法として有名なのは「数日にわたって流水にさらす」ですが、この方法で食べる食べ方は今ではほとんど行われていません。
ほかにもさまざまな方法がありますが、いずれも時間と手間がかかる作業です。
ところがこの厄介なとちの実素材のアクも、一般家庭でも簡単にできるおすすめな方法があります。
時間は多少かかりますが作業そのものは簡単&シンプルですし、正しく下処理したとちの実素材は素朴な食感と味が楽しめるのでおすすめです。
とちの実のアク抜き
自宅でも手順さえ間違えなければ簡単にできる下処理をすれば、今では口にするのも珍しい生とちの実も自宅で簡単にアレンジして楽しめます。
用意するのは木灰と水だけですが、最初は水を張った鍋にとちの実素材をさらしておくだけです。
数日はかかりますしその間も何度か水を取り換える必要がありますが、水の取り換え以外は放置しておけばよいのでそれほど手間もかかりません。
数日かけて水に浸しても生のままのとちの実素材は、そのままで食べられないほど強いアクがあります。
そこで一度ざるにあげ、数日かけて天日干しにします。
振った時にからからと音が聞こえるようになれば天日干し作業は終了です。
次に茹でる作業でアク抜き処理をします。
茹でる作業も2度に分けて行わなければ頑固なアクは取れません。
まず熱湯で一度茹でるのですが、水の段階でとちの実素材を鍋に入れ沸騰したら火を止めそのまま1晩放置してください。
翌日になれば完全に冷めているので、外皮部を包丁で丁寧に剥きましょう。
ただし剥いてからすぐに2度目を茹でることはできません。
再び鍋に水をはり、外皮部を取り除いた状態で水にさらして約2週間待ちます。
この間もかなりのアクが水に染み出てくるので、1日に数回程度水を交換しながらアク抜き処理をしましょう。
ここまで終えれば、ようやく2度目の茹で作業ができます。
木灰を入れて茹でるアク抜き法もありますが、ここでは簡単にできる方法としてとちの実素材のみを水から茹でます。
1度目同様沸騰したら火を止め、すぐにざるにあげて冷ましてください。
冷めたとちの実素材は水を加えた木灰にまぶし、最後に熱湯を入れて全体を混ぜ合わせたら最後の寝かせ作業です。
容器の蓋を締めた状態で3日寝かせれば表面が真っ白になるので、色がきれいになったのを確認して流水で表面をきれいに洗浄し、再び水にさらして1晩待てば下処理作業も終了になります。
とちの実の簡単でおすすめの食べ方
下処理におおよそ1ヶ月程度かかるとちの実素材ですが、丁寧に下処理したとちの実素材は素朴な味と食感が楽しめるおすすめの食材です。
地域によってはさまざまな郷土料理にする食べ方もありますが、下処理する前と比べるとかなりかさが減っています。
そんなとちの実素材は餅との相性が良い食材なので、餅×とちの実という昔ながらの食べ方がシンプルで簡単にできるおいしいおすすめの食べ方です。
栃餅
下処理によって真っ白になったとちの実素材は、白あんに加工して餅で包む食べ方が最もシンプルで簡単なおすすめの食べ方です。
すりつぶしたとちの実素材に砂糖と水を加え、鍋に入れて弱火でゆっくりと練っていきます。
白あんができたら、用意しておいた白餅で包み表面に片栗粉をまぶせば完成です。
なお餅は切り餅でもOKで、その場合は耐熱容器を使って電子レンジで切り餅を柔らかくするとよいでしょう。
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とちの実を昔ながらの食べ方で食べてみよう!
たんぱく質を多く含むとちの実素材はアクが強いため、アク抜き処理をするのが食べ方の基本です。
正しく下処理したとちの実素材は独特な食感を楽しむ食べ方ができますし、餅×とちの実という昔ながらの食べ方も素朴な味が楽しめる食べ方として人気があります。