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余市は多くのワイナリーが集う地
広大な土地が広がる北海道は、生産量日本一を誇る作物が数多くあり、ワイン用のぶどうもその一つです。全国の収穫量の28%を占めるワイン用ぶどうを作っている北海道にはたくさんのワイナリーがありますが、その中でも余市は北海道一の、ワイン用ぶどうの生産地となっています。
余市はワイン用ぶどうの生産量が北海道内で48%と半分近くの量を生産していますが、それは余市の気候と関係しています。ワインを作るには気候や土壌がワインの出来に大きく左右するため、寒暖差が大きいか、雨の量が多いかというのは重要な条件です。
余市の気候は北海道の中では比較的温暖で、夏から秋にかけての降水量は少なめです。ワイン生産国の一つ、ドイツに近い気候であることから、ドイツに近い品種が多く栽培されています。最近では温暖化の影響もあり、以前より耐寒性の低い品種の栽培も試みられています。
余市の気候に適した品種を使い、上手く生産が行えていることから、余市には次々とワイナリーが作られるようになりました。結果、余市はワイン用ぶどう、そしてワインの一大生産地として、より良いワイン作りが今も行われています。
「ワイン特区」余市でのワイナリーの歴史
現在、余市町は「ワイン特区」に認定され、11軒ものワイナリーが集っています。ワイン特区とは、国から認定を受けることで、いくつかの条件下では酒税法上の規制が緩和されるというもので、2011年にこの認定を受けてから、余市のワイン作りはより盛り上がることとなりました。
元々、北海道開拓時代にぶどうやりんごの苗木が配布されたことが余市の果樹栽培のスタートではありますが、その後は余市のワイナリーの代名詞でもある「余市ワイン」の設立や、北海道の土壌や気候に適した品種の試験栽培など、様々な過程がありました。
試行錯誤の末、1984年に余市で本格的なワイン用ぶどうが栽培されることになり、酒造各社が町の生産者とぶどうの栽培契約を行うようになったことから、現在のワイン生産地となるに至っています。
「余市・仁木ワインツーリズムプロジェクト」の発足
ワイン生産地であることを活かして、「余市・仁木ワインツーリズムプロジェクト」というプロジェクトも立ち上げられています。これは、ワイン品評会への出品や試飲イベントの開催、ワイン生産者やワイナリーの紹介を通し、余市町と仁木町のワイン産地としての知名度を上げるためのものです。
ホームページでの動画紹介やイベントを通じて、余市でのワイン生産がより身近に感じられ、そして余市のワインを楽しみに来てくれる人が増えることを目的として、様々な事業や活動を行っています。ワイナリー巡りを考えているならぜひチェックして欲しいプロジェクトです。
それではここから、ワイナリー巡りをしてみたい人におすすめの、余市のワイナリーとその見どころ、またワイナリー巡りが出来るツアーの情報もお伝えしていきます。工場見学として楽しめるワイナリーから、豪華な試飲が楽しめるワイナリーもあり個性は様々です。
余市産ワインの先駆け:余市ワイナリー
余市にある数々のワイナリーの中でも特に有名で、ワイナリー巡りの行き先にも必ずと言って良いほど含まれているのがこの余市ワイナリーです。余市ワイナリーは余市がワインの産地となる先駆けとなったワイナリーで、気候に合ったぶどうを元に、何種類ものワインを生産しています。
扱っているぶどうは、どれも耐寒性のあるドイツ品種で、ドイツの品種を使ったワインは甘めのものが多いです。余市ワイナリーで作るワインも、赤はバランスの取れたミディアム、白は甘口よりの味のものが多くなっています。
余市ワイナリーで生産しているワインのラベルにはしっかりした文字で「余市」とロゴが入っており、余市産へのこだわりが表れています。
「余市ワイン」は、1974年に日本清酒株式会社によって設立されたのが始まりで、余市のワイン作りを現在に至るまで引っ張ってきた存在です。そして、余市葡萄酒醸造所の敷地に「余市ワイナリー」として2011年にレストランやショップを含むワイナリーが設立され、現在に至っています。
見どころはリニューアルした工場見学
余市ワイナリーは2013年に工場見学用の見学コーナーを設置した施設にリニューアルしたこともあり、ワイナリー巡り初心者にもおすすめしたいワイナリーです。工場見学は自由に入ることが出来るので、気負わずに入って見学を楽しめます。
工場見学向けのコーナーは、醸造棟と瓶詰貯蔵棟を自由に見ることが出来るようになっており、実際にワインが商品として出来上がっていく様子は見どころの一つです。また、ワイン用品種や製造過程の説明、発酵タンクの実物なども展示されているのでワイン作りを一から知ることが出来ます。
さらに余市ワイナリーがワイナリー巡りの場所として素晴らしいのは、ワインを様々な角度で楽しめる施設が充実していることです。先程紹介した工場見学用の見学コーナーもですが、他にカフェ&ベーカリー、レストランにショップ、その上ギャラリー&アトリエまで設置されています。
まずワインショップは、「余市ワイン」だけでなく、余市ワイナリーを運営する日本清酒の製品である「千歳鶴」の酒粕など、日本酒由来の商品や地元産の工芸品まで販売されています。ワインは試飲も出来るようになっているので、せっかくの機会を活かして試飲や買い物を楽しみたい場所です。
そして、レストランではピザにハンバーグ、パスタとどれも美味しそうなメニューが並び、ドリンクやスープなどのビュッフェも付いています。もちろん、余市ワインも各種用意されているので料理とワインの組み合わせも充分に堪能することが可能です。
そしてレストランで食事というほどではないけれど軽食とちょっとお茶、という気分の時ならカフェが利用出来ます。カフェならワインは関係無いように思われますが、余市ワインを使用したソフトクリームが販売されており、余市ワインの一つの形として味わってみたいメニューです。
余市ワイナリーの魅力はワインに直結する施設だけではありません。ワイナリーにこんなものが、と驚かれるのがギャラリー&アトリエです。絵画や写真などジャンルは様々ですが、北海道の作家のものを中心に2~3ヶ月の期間ごとに作品展示をしており、意外な見どころでもあります。
ワインに詳しくなくても、興味さえあれば十二分に楽しめる場所として、余市ワイナリーは見どころたくさんの施設となっています。
住所 | 北海道余市郡余市町黒川町1318番地 |
電話番号 | 0135-23-2184 |
丹精込めたワインづくり:オチガビワイナリー
余市にあるワイナリーの中でも、本物志向のワイナリーを巡りたいならおすすめは「オチガビワイナリー」です。オチガビワイナリーで作られている、シックなボトルデザインのワインからは、外国からの輸入物や生食用ぶどうは一切使用しないという、オーナーの強いこだわりが見えます。
作っているワインはフランスのボルドーで作っているワインを意識した、複雑な味わいを売りにしたものが多いですが、ブレンドもありバリエーションが豊富なので自分好みのものに出会えます。
醸造棟やレストラン、庭園を囲むような形でぶどう畑が広がっている様子は目に焼き付けておきたくなるような美しさで、オチガビワイナリーを訪れた際の見どころでもあります。訪問客が行くことが出来るのは、レストランとベーカリー、試飲カウンター、ショップといった施設です。
こだわりのレストランとじっくり楽しめる試飲が魅力
オチガビワイナリーの魅力は、何と言っても美味しいワインへのこだわりが見られることです。まずレストランですが、余市町内の信頼出来る取引先から集めたお肉や魚、野菜といった材料を使ったお料理を提供しており、季節や地元の味が充分に感じられます。
レストランのメニューは、ランチはアラカルトやセット、ディナーはお任せコースでの提供となっています。ディナーであれば、グラスワインの選択肢が豊富で、こだわり抜いた料理で美味しくワインが飲めるので、レストランを目的にワイナリー訪問する人も少なくないほどです。
食事時を外して行くのであれば、レストラン以外にもベーカリーで美味しいパンに出会うことが出来ます。ハスカップジャムなど北海道ならではのジャムも販売されており、お土産にもおすすめです。
レストランの他にワインを味わうことが出来るのが、オチガビワイナリーの中にある試飲カウンターです。試飲は方法がいくつかあり、試飲カウンターで3種類のワインを有料試飲する方法がまず1つ、そして喫茶コーナーで提供してもらう方法、さらにはお庭のテーブルで試飲する方法があります。
試飲カウンターで3種類のワインを試飲するだけでも楽しい体験ですが、時間や料金的に余裕があるなら体験して欲しいのはお庭での試飲です。ワイナリーの見どころでもある美しいお庭を眺めながら、おすすめワイン4種類の試飲が出来る上におつまみも付いてきます。
ワインと美しい風景と共にゆったりとした時間を過ごせるため、試飲だということを忘れてしまうほどです。お庭での試飲も試飲カウンターでの注文となるので、興味がある人にはぜひおすすめです。
住所 | 北海道余市郡余市町山田町635 |
電話番号 | 0135-48-6163 |
余市・仁木地区の融合:NIKI Hillsヴィレッジ
余市町・仁木町に渡って広がる平野が見える位置にあり、余市のワイナリーの中でもより特殊な、滞在型ワイナリーとして運営されているのが「NIKI Hillsヴィレッジ」です。単にワインを飲んで楽しむだけでなく、空間も含めて様々な形でワインに触れられるのが魅力のワイナリーとして人気です。
NIKI Hillsで作っているワインは、生産数が限られていることもあり、オンライン販売はなく現地でのみ購入出来ます。シンプルでおしゃれなラベルデザインのワインは飲みやすいものや甘口が多く、それほどワインが得意でない人であっても、お気に入りの1本が見つけられます。
NIKI Hillsのワインは日本ワインコンクールで受賞しているものもあり、品質が確かであることから、有名レストランやホテルなど、全国各地のレストランで取り扱われています。
また、自社のぶどう畑についても、2016年にぶどうを植えてスタートさせたため、2019年秋から自社ぶどうでのワイン醸造を予定しています。自社のぶどう畑ではピノ・ノワールやシャルドネなど有名品種も栽培しているので、今までとはまた違ったワインも期待されています。
宿泊施設も備えた複合型ワイナリー
「滞在型ワイナリー」とされているNIKI Hillsですが、その理由は宿泊施設も兼ね備えたワイナリーであることからです。事前予約すれば128坪もの広さの1棟を丸々使えて、22名が泊まれる宿泊施設のため、団体での利用に適しています。
余市の平野が見渡せる宿泊施設も見どころではありますが、宿泊施設に隣接するワイン醸造所、そして地下施設もまた見どころとなっています。醸造所は醸造から発酵、熟成と瓶詰めまで行われるので工場見学として楽しめるポイントです。
また、地下施設はワインセラーや樽庫があり、ガラス越しに樽庫の様子を眺められるレストランも今後オープン予定となっています。現在だけでなく今後の見どころがたくさんのワイナリーです。
そんなNIKI Hillsでは、ワイナリー内を巡って工場見学やガーデン散策、試飲まで解説付きで楽しめるワイナリーツアーがあります。事前予約制ですが、ワインの製造過程について説明を受けながらの工場見学となるため、より理解しやすくワイナリー全体を満喫出来ます。
見学の所要時間は約1時間で、終わってからの試飲はラウンジや屋上テラスと、眺めの良い場所でNIKI Hillsのワインを味わえます。試飲内容は季節によっても異なるので、ガーデンの風景も相まって、年に数回訪れても飽きることがありません。
工場見学以外にも、ぶどうや他の果樹園に関する農業体験も受け付けています。果樹園では季節に応じて様々な果物が収穫されているので、気になる人は問い合わせてみましょう。
住所 | 北海道余市郡仁木町旭台148-1 |
電話番号 | 0135-32-3801 |
ツアーで楽しむ余市のワイナリー巡り
ここまでは余市の中でも注目のワイナリーをご紹介してきましたが、ワイナリーやぶどう畑を巡り、ワインという面から余市を堪能する、ワイナリー見学ツアーもあります。ワイナリー巡りを好む人からすれば、単なる工場見学やワイナリー訪問以上のものが得られる内容のツアーもあります。
北海道が提案するツアー内容には、ぶどう畑での収穫体験をした後にワインの試飲、宿泊した翌日は果樹園を訪問してスイーツ作りを行う1泊2日での農業体験メインのもの、余市ということでワイナリーとウイスキーの工場見学を両方行えるものなど、見どころとなるポイントや巡り方も様々です。
工場見学がメインとなる通年開催のツアーもあれば、収穫や農業体験などを含むので季節限定のツアーもあります。よりディープなワイナリー巡りをしたいなら、ぜひ参加してみましょう。
余市へのアクセス
工場見学も出来てぶどう畑などの見どころも多い、ワイナリー巡りの目的地として優れた土地である余市ですが、余市に行くためのアクセス方法はどうなっているのでしょうか。旅行先として考えた場合、出発地ごとのアクセス方法をそれぞれまとめました。
ワイナリー巡りの際のアクセス方法ということを考慮した、実際に行くなら注意してほしい点にも触れているので、旅の下調べの一環として見てみてください。
新千歳空港から
北海道旅行へ行く人の拠点として利用される新千歳空港から移動するのであれば、鉄道、車といった方法で余市へ行くことが出来ます。所要時間をざっと計算すると、鉄道、車共に約2時間程度かかると考えておいた方が良いでしょう。
まず、鉄道ですがJRに乗車しての移動となります。新千歳空港からは快速エアポートという路線が出ており、これに乗れば1本で小樽駅まで移動することが出来ます。小樽駅からは同じくJRで函館本線という路線があるので、それに乗れば3駅で余市駅に到着します。
鉄道は乗り換えが少なく楽な方法ではあるのですが、JR函館本線は本数が少なく、上記の乗り換え経路も電車が1時間に1本、時間帯によってはそれより少ないことがあるのでその点は注意が必要です。
もう1つの方法、車の場合は高速道路を利用すれば速く移動することが可能です。北海道の高速道路が整備されたこともあり、道央自動車道、札幌自動車道といくつかの高速道路を経由すれば、道路状況にもよりますが1時間半~2時間で余市町に着くことが出来ます。
車さえあればすぐに出発することも可能で、自分たちのペースで動ける車移動は便利ですが、1つ問題があります。ワイナリーでの試飲を楽しみにワイナリー巡りへ行く人にとっては、同行者全員が試飲出来る状態ではなくなることです。
気にせず運転手をかって出てくれる人がいれば良いですが、そうでない場合は他のアクセス方法をとるか、旅行日程の1日目と2日目で運転手を変更するなどの配慮や工夫が必要です。
札幌市から
北海道の道庁所在地であり、観光地でもある札幌市からは鉄道や車の他、高速バスというアクセス方法もあり便利です。札幌観光を少し楽しんだ後に余市へ移動すれば、雰囲気の違う町をそれぞれ満喫出来ます。
まず、鉄道で移動する場合はJR札幌駅から小樽駅を経由して余市へ行くという経路となります。先程ご紹介した快速エアポートや区間快速など、札幌~小樽間はいくつかの路線が通っているので比較的行きやすいのが特徴です。そして、小樽駅からは同じくJR函館本線に乗れば余市に到着します。
鉄道での移動はやはり函館本線の本数の少なさがネックではありますが、乗り換えがスムーズであれば1時間程度で到着出来ます。また、高速道路を利用すれば車移動でも所要時間はほぼ同様です。
そして、新たな移動手段として検討したいのが高速バスでの移動です。札幌駅のターミナルを出発し、いくつもの停留所を経由して余市へ向かう「高速よいち号」という高速バスを北海道中央バスが運営しており、札幌駅から余市駅あたりまで、1時間40分ほどで到着します。
到着予定地などにより「高速いわない号」「高速ニセコ号」など名前は異なりますが、どれもほとんどが余市に停車します。電車に比べ本数は多く、30分~1時間に1本程度出ているので、もし乗り遅れたらという心配は多少和らぎます。また、支払いもICが使えて便利です。
また、運賃は電車移動が1290円、高速バスが1050円と高速バスの方がやや安く設定されています。移動手段の選定に困っているなら、高速バスは候補に入れておきたい手段です。
小樽市から
大きな町というだけでなく、北海道の中でも有数の、見どころがたくさんの観光地として知られる小樽市ですが、余市へも移動しやすい立地の町です。小樽市から余市への移動は、鉄道、車、バスといった方法が使えます。
まず鉄道については、他出発地の乗り換え地点で小樽駅が使われていたのと同様、JR函館本線に乗車して余市駅へ行く方法となります。やはり本数が少ないため、乗車時刻まで小樽で散策をするなど、時間つぶしの方法を考えておいた方が安心でしょう。電車の乗車時間は30分程度です。
そして、車であれば高速道路利用でも、下道利用でもどちらでも30分程度で到着出来るので、混雑状況で特に差がないなら下道の方がお得で楽に着きます。
もし小樽に宿泊し、余市のワイナリー巡りをするというのであれば、車でワイナリーへ向かい、宿で買ったワインを開けるといったやり方もあります。車移動で試飲が出来なくても、旅行先で全員がワインを楽しむことは可能なので、小樽市からの車移動はおすすめです。
そして、やはり試飲を楽しみたいから公共交通機関が使いたい、というのであれば小樽駅からバスが出ています。バス移動だと約40分で余市駅前に到着し、本数も30分に1本程度は走っています。運賃も500円かからないので、手軽に使っていきたいアクセス方法です。
余市のワイナリー巡りでこだわりのワインに出会う
果実の生産を原点に、ワイン生産地としても余市が魅力的な場所であることがお分かりいただけたでしょうか。ぶどう畑や醸造施設、試飲など余市のワイナリーは見どころや楽しめるポイントがたくさんで、現地でワインを見て味わいたいという気持ちにさせられます。
ワインそのものだけでなく周囲の風景や出来上がっていく過程など、ワイン産地ならではの余市の良さを感じながら、これという1本に出会える旅にしてください。