東京三大どら焼き・うさぎやは、発祥の地であるうさぎや上野店のほかに、日本橋や阿佐ヶ谷にも店があります。どの店舗もどら焼きの名店・うさぎやですが、店舗によって名物のどら焼きには違いがあります。そんな名店・うさぎや各店舗のどら焼きの違いを紹介しましょう。
うさぎやのどら焼きは各店舗で味が違う?
「どら焼きが美味しい和菓子のうさぎや」といえば、東京三大どら焼きとして有名なうさぎやのことです。どら焼きの名前は、形が古くから日本に伝わる打楽器・銅鑼(どら)に似ていることに由来します。
江戸時代にはすでに庶民の間で親しまれていたどら焼きですが、現在のように餡をカステラ生地で挟むどら焼きのスタイルとは違っていました。
江戸庶民の間でよく食べられていたどら焼きは、丸く伸ばした生地の四隅を折りたたみ、その中央に餡をのせたもので、現在のどら焼きよりもきんつばに似た和菓子です。
そんなどら焼きが現在のような円盤型のカステラ生地に挟まれるきっかけとなったのは、西洋から輸入されたホットケーキの影響です。もちろん東京(江戸)のどら焼きもその影響を強く受けました。
こうしてふんわり・しっとりしたカステラ生地に餡をはさむスタイルへと進化したどら焼きは、東京銘菓になります。そんな東京には、美味しいどら焼きがたくさんあります。
もちろんその中には、どら焼きの名店と呼ばれる店も含まれます。ただしうさぎやのどら焼きは、数あるどら焼きの名店の中でも「東京三大どらやき」と呼ばれるほど有名です。しかもどら焼きで有名なうさぎやには、他の和菓子店では見られない珍しい特徴があります。
初代が開いた上野のうさぎや
東京三大どら焼きといわれるうさぎやですが、都内には「うさぎや」の屋号を持つどら焼きの名店は、上野・日本橋・阿佐ヶ谷にあります。これらのうさぎやは、どれも東京三大どら焼きと呼ばれる「うさぎや」で間違いありません。
初代・うさぎやの伝統を受け継いだ正真正銘のうさぎやですが、一般的に「東京三大どら焼き」と呼ばれているのは、上野に店舗があるうさぎやです。上野といえば古くから東京の観光名所と呼ばれる場所で、上野の名所めぐりをしながら上野名物を食べるのが定番でした。
そんな上野にうさぎやが店を構えたのは、大正2年のことです。今でこそ「うさぎや上野」といえばどら焼きの名店として有名ですが、創業当初のうさぎや上野は、最中が人気の店でした。
もちろん和菓子店ですから最中以外にもさまざまな和菓子を作っていましたが、中でも特に人気があったのが、今も受け継がれるうさぎやこだわりの餡です。そんなうさぎや上野の職人たちが目を付けたのが、江戸時代から伝わる和菓子・どら焼きでした。
まだこの時代のどら焼きは、1枚の生地に餡をのせたきんつば風どら焼きでした。それをうさぎや上野では円盤型のカステラ生地を2枚使い、生地の間に餡をはさむ新しいスタイルのどら焼きにしました。
このスタイルのどら焼きを売り出したのはうさぎや上野が初めてで、その後うさぎや上野のどら焼きが全国のどら焼きのスタンダードモデルになります。
こうして最中が主力商品だったうさぎや上野は、「どら焼きが名物のうさぎや」へと変わります。なおうさぎやには、名物どら焼き発祥の地であるうさぎや上野のほかに、うさぎや日本橋とうさぎや阿佐ヶ谷があります。
どれもうさぎやの伝統を受け継ぐどら焼きの名店で、うさぎや日本橋とうさぎや阿佐ヶ谷の創業者は、いずれもうさぎや上野の血縁者です。まずうさぎや上野の息子が独立して創業したのが、うさぎや日本橋です。
現在うさぎや日本橋は、現在「日本橋うさぎや本店」「日本橋うさぎや中央通り店」の2店舗あります。うさぎや阿佐ヶ谷は、うさぎや上野の娘が創業した店舗です。
うさぎや阿佐ヶ谷の創業者である娘は、西荻窪で材木屋を営む夫と結婚するまで、うさぎや上野で店の手伝いをしていました。ところが東京大空襲で夫の材木屋が消失してしまいます。
そこで嫁ぎ先の家計を支えるため、うさぎや上野の娘が、わずかな職人とともに西荻窪で創業したのが、うさぎや阿佐ヶ谷の前身となる店舗です。
西荻窪の店舗は7年契約で借りていたため、契約満了のタイミングで現在の阿佐ヶ谷にうさぎやを移転させます。これが現在のうさぎや阿佐ヶ谷です。
各店舗が自分たちの味を追求
同じ屋号を持つ3つのうさぎやは、いずれもどら焼きの名店ですが、系列店というわけではありません。もちろん全く関係がないのではなく、日本橋・阿佐ヶ谷のうさぎや創業者は、大正2年に上野に店を構えた「うさぎや」の親族にあたります。
上野のうさぎやの息子が日本橋のうさぎやの創業者で、上野のうさぎやの娘が阿佐ヶ谷のうさぎやの創業者です。ところがこの3店舗を比較すると、店舗ごとに違いがあります。
その理由は日本橋のうさぎやと阿佐ヶ谷のうさぎやが、上野のうさぎやからのれん分けした店舗ではなく、それぞれが独立・開業した店舗だからです。ですから上野・日比谷・阿佐ヶ谷のいずれも、正式な店名はすべて「うさぎや」となります。
ただしそれぞれ異なるこだわりをもってどら焼きづくりをしているため、同じうさぎやのどら焼きでも、どの店舗のうさぎやどら焼きかで味が異なります。
そこで便宜上「上野のうさぎや(うさぎや上野)」「日本橋のうさぎや(うさぎや日本橋)」「阿佐ヶ谷のうさぎや(うさぎや阿佐ヶ谷)」と言い分けています。
うさぎや日本橋本店・中央通り店のどら焼き
銀座や日本橋で東京見物のお土産や差し入れとして人気なのが、上野にあるうさぎやの息子が創業した日本橋のうさぎやです。現在日本橋のうさぎやは、「うさぎや日本橋本店」「うさぎや中央通り店」の2店舗あります。
うさぎや中央通り店はうさぎや日本橋本店の系列店なので、どら焼きの味に違いはありません。ただし上野や阿佐ヶ谷のうさぎやと比較すると、味・ボリュームとも大きな違いがあります。
全体的にずっしりしていて大き目
地元でも人気の日本橋うさぎやは、落ち着いた純和風の雰囲気の店舗です。いかにも上品な感じの店内ですが、名物のどら焼きはいい意味で予想を裏切ってくれるボリュームたっぷりのどら焼きです。
全国で初めてカステラ生地を2枚重ねにした日本橋のどら焼きは、横から見ると名前の由来通り銅鑼にそっくりです。カステラ生地の表面に、焼き印などの装飾はありません。個別包装されたビニールの裏側に、うさぎやのマークが控えめにプリントされているだけです。
日本橋のうさぎやどら焼きは、手に持った瞬間からずっしりとした感触があります。見た目のボリュームだけでなく重量感もあるため、「中にどれほどの餡が詰まっているのか?」と想像するだけでもテンションが上がります。
うさぎやが発祥といわれる円盤型のカステラ生地も、つやつやしていて食欲がそそられます。さらに一切焼きムラのないカステラ生地の表面を見るだけでも、卓越した職人技を感じます。
中の餡はしっとりしていて甘さ控えめ
日本橋のうさぎやどら焼きは、あずき餡が好きな人に人気があります。どら焼きの餡は、上野・阿佐ヶ谷のうさぎやと同じく粒餡を使用しています。ただし粒の大きさを比較してみると、3つのうさぎやの中で最も粒が大きいです。
豆の食感をしっかり残しつつも餡そのものはまろやかなので、中の餡だけを取り出して食べてしまいたくなります。手に取ったどら焼きを半分にカットし中身を見れば、ずっしりと重かった理由がわかります。
ふわふわのカステラ生地はそれほど厚みはなく、端と中心の厚みもほぼ均一です。そんなカステラ生地の間には、こだわりの餡がこれでもかというほどぎっしり詰まっています。これが手に持った瞬間にずっしりと重さを感じた理由です。
カステラ生地の厚みでボリュームがある訳ではないので、1個食べるだけでもかなりの満腹感があります。カステラ生地と餡の相性も抜群ですが、日比谷のうさぎやどら焼きは「あずき好きを自認している」「通常サイズのどら焼き1個では物足りない」という人におすすめです。
価格
3ヶ所あるうさぎやどら焼きと比較すると、値段がわかりやすいのが日本橋のうさぎやの特徴です。こだわりの粒あんがずっしり詰まったどら焼きが1個200円なので、手土産にも自分用のご褒美にもおすすめです。
ただし日本橋のうさぎやどら焼きには、食品添加物が一切使用されていません。そのため消費期限はわずか1日です。
消費期限の短さもほかのうさぎやと比較したときの違いに挙げられますが、こだわりが詰まったどら焼きだからこそ、消費期限内に食べきることでカステラ生地と餡の絶妙なコラボが楽しめます。
うさぎや上野店のどら焼き
現在のどら焼きの形を生み出した上野のうさぎやは、上野広小路駅から約200mの位置にあります。老舗和菓子店らしい趣のある店舗で、屋根には屋号にもなっているうさぎの像が設置されています。
「東京三大どらやき」と呼ばれるだけあって、来店客の中には外国人観光客の姿も多いです。店内のショーケースには、名物のどら焼きを含めさまざまな和菓子が並んでいます。なお名物のどら焼きは、事前に予約注文も可能です。
レンゲの蜂蜜入りのサクッとした皮
上野のうさぎやどら焼きの特徴は、上品な甘さにあります。見た目を日本橋のうさぎやどら焼きと比較すると、上野のほうがやや小ぶりです。餡にはあずきの産地・北海道十勝産を使用しているので、じっくり時間をかけて煮詰めてもきちんとあずきの風味が感じられます。
もちろん餡そのものにもこだわりがありますが、他の店舗のどら焼きと味を比較したときにその違いがストレートに分かるのが、ふんわり焼かれたカステラ生地です。
どら焼きづくりに使う原材料の数は、日本橋と比較したときの違いの1つですが、上野の原材料にはれんげはちみつが使われています。はちみつの中でも超高級品といわれるれんげはちみつは、まろやかな甘みの中にほのかな花の香りがします。
そんなれんげはちみつをカステラ生地に練りこんでいるので、上野のうさぎやどら焼きは生地だけで食べても美味しいです。
日本橋のどら焼きと比較すると消費期限は長いですが、ふんわりした生地の食感とほのかに香るれんげはちみつの香りは、購入当日に食べたほうがより強く感じます。
粒が小さく上品な甘さの餡
外国人観光客からも人気がある上野のうさぎやどら焼きは、100年にわたって守り継いできた餡が最大の魅力です。上野のうさぎやどら焼きを半分に割ってみると、つやつやとみずみずしい粒餡が姿を見せます。
粒餡の大きさは、日本橋・阿佐ヶ谷と比較するとやや小ぶりですが、これも上野のこだわりの1つです。すべて同じ粒のあずきを使用することが、上野のうさぎやの餡に欠かせません。
そのため上野のうさぎやでは、収穫した時点で選り分けると、店舗に届く前に一度穀物商が手選りします。この時点で粒はほぼ均一ですが、上野のうさぎやはこれだけだと満足しません。
仕入れたあずきを浸水させている間に、職人が一粒ずつ大きさを確認し、雑味や食感に影響する未熟なあずきを選り分けます。こうした地道な手作業を各工程ごとに繰り返すことで、ようやく餡が炊き上がります。ところがこれで完成ではありません。
炊いた餡は2日間寝かせます。あえて餡を寝かせることで、あずき本来の風味や上品な甘み、さらにツヤが増します。また手間を惜しまず創業以来受け継がれてきた製法を守り続けることで、「東京三大どらやき」と呼ばれる上品などら焼きの餡が完成します。
価格
上品な甘さと程よいサイズが特徴のうさぎやどら焼きは、1個205円です。保存料などは一切使用していませんが、餡が完成するまで2日熟成させるため、消費期限は購入から2日間となっています。
名物のどら焼きは予約をしなくても購入できますが、16時以降は予約がないと購入できません。なお16時以降に予約が必要なのは名物のどら焼きのみで、そのほかの和菓子は16時以降も予約なしで購入可能です。
うさぎや阿佐ヶ谷店のどら焼き
材木商に嫁いだうさぎやの娘が創業した阿佐ヶ谷のうさぎやは、包装にうさぎのイラストがプリントされているのが特徴です。
包装を外しどら焼き本体のみで比較しても、上野・日本橋とそれほど大きな違いは見られません。あえてどちらに似ているかといえば、日本橋のどら焼きです。中心部の膨らみはよく似ていますし、手に持ったときの重量感も似ています。
きめ細かくしっとりと弾力のある皮
阿佐ヶ谷のどら焼きの生地は、上野・日本橋と比較するとやや厚みがあります。ただし単に厚みがあるだけではなく、きめの細かさにもこだわっています。
また存在感のある餡をたっぷりと包めるよう、しっとりとした生地に仕上げています。そのため厚みのある生地ではありますが、パサつきがなく最後まで美味しいです。
餡に塩とみりんが入っている
阿佐ヶ谷に限らず上野・日本橋でも、和菓子の命である餡には並々ならぬこだわりがあります。どら焼きの餡の原料はあずき・砂糖・水の3つが基本ですが、そこにみりんと塩を加えているのが阿佐ヶ谷の特徴です。
みりんと塩は上野・日本橋の餡には使用していないので、これだけでも阿佐ヶ谷のうさぎやどら焼きの味の違いといえます。
日本橋のどら焼きに似たやや大きめの粒餡を使用していますが、あえてみりんと塩を加えることで、甘すぎず最後まで食べられます。
価格
3種類のうさぎやどら焼きの中で最もリーズナブルなのが、阿佐ヶ谷のどら焼きです。1個190円ですし、1個だけでも購入できます。時間によっては出来立てのどら焼きも店頭に並びます。
シンプルな原材料で作るどら焼きは出来立てが一番美味しいので、作りたてのどら焼きに出会えたら即買いがおすすめです。
どの「うさぎや」のどら焼きも絶品!
おなじ屋号をもつ3種類のうさぎやですが、それぞれがこだわりをもってどら焼きづくりをしているので、どの店舗のどら焼きも甲乙つけがたい絶品どら焼きです。
差し入れにも人気のうさぎやどら焼きは、保存料を一切使わないので日持ちしません。ですから購入したどら焼きは、その日のうちに食べるのがおすすめです。